フレン&コレット




剣を収め、空を見上げる。

ゆっくりと流れる雲を目で追い、一息ついた。

遠くから声が聞こえ、顔を向ける。


「フレン、見て!」


白い植木鉢を抱き締めて、走ってくる少女。

いつものように転んだら大変だ、と彼女に駆け寄り、受け止める気になっておく。

が、今日に限り、それは杞憂だった。


「見て」


大切に抱き締めていた植木鉢をフレンの前に出す。

黄色とオレンジの花がいくつも咲いていた。


「これって、君が大切に育てていた花だよね」

「うん。一番に見せたかったの」

「そうか。ありがとう」

「えへへ」


少し照れたように頬を染めて笑った。

彼女からその植木鉢を受け取り、改めて眺める。

フレンはよく知っている。

コレットがどれだけ大切に育ててきたのかを。

だから、この花は綺麗なのだ。

コレットの愛情を体一杯に受けて育ったのだから。


「ねえ、フレン」

「ん?」

「その花、もらって」

「……え?」

「あ、あのね」


コレットは両手を組んだりほどいたりしている。

いつもなら、言葉に迷うことはないのに。


「いつも頑張ってるフレンに、ありがとうの気持ち」

「……」


断ろうと思った。

彼女の頑張りに、自分が及ばないと分かっていたから。

……そう思い込んでいたから。

けれど。


「ありがとう。大切にするよ」

「うん! 後ね」

「何だい?」

「今度、修行に付き合って」

「? 僕が? 君の?」

「あ、違うの。ロイドの……」

「そうか。うん、いいよ」


そう答えれば、コレットは綺麗な笑みを見せた。

本当に強い少女だ。

自分の運命から逃げ出さず、真っ直ぐに向き合っている。

少しでも、彼女の力になりたいと思う。


「コレット」

「何?」

「僕に出来ることがあれば、いつでも言って」


そう言いながら彼女の頭を撫でれば、子ども扱いだと思ったのか、拗ねた表情を見せた。

そんなつもりがなかったフレンは、小さく謝りその手を退けた。


「見て」


コレットは一歩フレンに近づく。

そして、彼を見上げた。


「私、ちょっと背が伸びたんだよ」

「そうみたいだね」

「うーん……。フレンって時々、ものすごく鈍い」


頬を膨らませ、そう言われたが彼はその言葉がよく分からなかった。


「ま、それがフレンらしさだよね」

「……」

「じゃあ、私は行くね」


約束があるからと告げて、歩き出したコレット。

躓いて転びそうになる彼女を慌てて支えるのは、数秒後の話。






E N D



2009/08/03
移動 2011/01/20



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