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小話
2012/10/14 14:35





「・・・・・・・・・・この辺りか」

 微弱だが死ぬ気の炎を感じる。温かいこれは間違いなくツナのものだ。魔界ではいざ知らず、ここは地上だ。間違えることもまずないだろうが。
(念には念を入れ、だな)

「ナッツ」
「ガゥ!」

 小さな匣を取り出し、炎に撒かれた獣を呼びだす。獣は見慣れない人間界に警戒したような仕草を見せるが、嗅ぎなれた匂いに気付いたのか、そちらに向かって駆け始める。炎を揺らめかせ宙に浮くように立っていた少年もまた、後を追うようにして促進を始めた。








【 2 】








「うわあああああ!?」

 突如として現れた少年(多分)にずざとスカルは後ずさる。
 壊れた机に重さを感じさせず、悠然と立つ様はいっその事威厳を感じさせる。
 一見ただの中学生のようにしか見えないが、温度の無い瞳ときっちりと着こなされたスーツはある種の人々を連想させた。そう、ゴットファーザーのような方々の・・・・・。
(ってやばいやばいやばい!)

 長年のパシリメーターが危険を訴えていた。
 これはなんとしても早めに御帰りいただかなければ面倒なことになる。

「あ゛ぁ?誰だコラ?いきなりどっから沸いてきたんだテメー、つーかそこから降りろ机壊れんだろ」
「先輩!?ちょ、何いきなり喧嘩売ってんですか!?つーか壊したのアンタだし!!」

 ・・・・・・・・・・だがそんなスカルの想い虚しく空気を読まない男が一人。
 人ん家で偉そうにしやがってというコロネロに、アンタの家じゃないでしょう!?と突っ込む。
 リボーンなんかは二人に構わずまだ赤ん坊の方を見ているっつーか見過ぎだきしょいんだけどなにこの人。とか一瞬だけなのに思ったらダンベル(コロネロが持参してきたもの。ほんと筋肉馬鹿だあの人は)が飛んできた殺す気か!? 

(っていうか何で動じないんだこの人達!?)




「・・・・・・・・・・フン」

 そんな3人を馬鹿にしたように見下ろし鼻で笑うと、少年は机から降りるとそっと赤ん坊に手を差し伸べた。琥珀の瞳が少し和らぐ。

「・・・待たせて悪かったな、帰るぞツナヨシ」

(迎えに・・・?)


 起こっていた問題が一度に解決するような言葉に、スカルは驚く。
 ということは上手くいけばこのまま―。


「ダ」


 だがしかし、そうはことは上手く進まないようで。
 実はまだずっとコロネロにしがみついていたツナはふいと顔を背けた。

 それに一瞬時が止まったかのような空気が流れる。


「嫌がってんじゃねーかコラ」
 いち早くそれに反応したコロネロは何故か勝ち誇ったような顔で笑った。嫌な顔だ。

「・・・・・・・・・・ツナヨシ、行くぞ」
 予想だにしていなかったらしい事態に止まっていた少年は、少し焦ったようにしながらもめげずにツナの足を取る。
 が、ツナはコロネロの服をしっかりと掴んだままだ。物凄い握力である。

「離せ、そんなもの、ツナヨシ・・・・ッ」
「おい嫌がってんじゃねーか、お前ホントにこれの面倒見てる奴なのかコラ?」
「あの、コロネロ先輩。その人は迎えに来てくれた人なんじゃ・・・・」
「いい加減に・・・・・ッ」


 そろそろ赤ん坊がやばいんじゃあとスカルが言おうとしたその時、

「ダーーーーーッ!!」
「〜〜〜ぐッ!!」


 スーツを来た少年が、一瞬にして炎に巻かれて燃え上がった。














「―――さっきはいきなり悪かった、」

 殊勝な態度で床に座り、少年は名乗った。

「俺はその赤子に仕える執事悪魔。]世という者だ」
「「「・・・・・・・・・・」」」









 はい?










 その場にいた三人は、少年、]世が言ったことを反芻してからとある単語に固まる。そんなことは気にせず、淡々と]世は言い綴る。


「――そしてコイツは、俺達魔族の王となるもの。名を・・・、ドン・ボンゴレ・ツナヨシ・サワダという」


 つまりは魔王だと、]世は無情に告げた。
 数拍の沈黙の後、コロネロとスカルが顔を見合わせる。
(おいマジでかコラ、悪魔通り越して魔王ってなんだコラ!?)
(おいさっきアイツこの赤ん坊連れて帰るみたいなこと言ってなかったか!?ふざけんなよアイツは俺が育てるつもりだったんだゾ!)
(んなこといったってさっきの炎どう説明すんですか!?なんであの人生きてるかんとか説明できんですか!?って、ちょ、リボーン先輩はなんなんですか気色悪いんですけど本気で!?)




「えーと、デーチモさん・・・。でしたっけ?」

 数分後。先輩二人に殴られ、涙眼になりながらスカルが言う。

「あの、そういう設定とか説明はいいんでホント、正直もうスルーです俺のキャパ越えてるし」
「小っせえキャパだな」
「黙ってて貰えますかリボーン先輩話進まないんで。それで、俺達はこの子を連れ帰ってくれたらそれでいいんでもう、はい」

 別にいいじゃねえか、というアホは放っておいて、スカルは言った。



「――――いや、それは無理だ」


 しかし、疲れたように息を吐いた]世により、それは否定される。
 それから忌々しげに、コロネロを見た。


「何故なら、お前は選ばれてしまったからな」
「あ?」


 視線を向けられ胡乱な顔をしたコロネロに、デーチモは無表情で言い放った。




「魔王の親に」




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