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小話
2012/08/05 17:00



 銀時は時々ふらりといなくなり、空を仰ぐ。

 晴天は眩しそうに眼を細めて、懐かし気に。曇天は声をかけることを躊躇うような張り詰めた雰囲気をともなって。雨天は泣いているのかと見間違うような、思い詰めた顔で。どれもぼんやりとした顔には変わりないのに、そんな横顔を見ていると、銀時はいつか何処かへと消えてしまうような気がして、新八は酷く恐くなる。
「・・・・・銀ちゃんっ、」
 その所為か、神楽は銀時が空を見上げることを嫌がる時がある。
「神楽?」
 袖を引かれ、二人がいることに今気付いたように不思議そうにしている。それに傷ついたかのように神楽は益々ぎゅうと着物を握った。

 黙りこくった少女に訝し気にしながら今度は助けを求めるように新八を見る。何、コイツどうしたの?と眼と口の動きだけで尋ねる銀時に新八は何も言わない。言えないのだ。不安がざわざわと広がるだけで言葉にならない。
 なんだ、お前もかよと弱ったように銀時は顔をしかめた。俺が何をしたっていうのよと嘆息しながら近くにあった少女の頭をぐりぐりと撫でる。
 うりゃうりゃと乱暴に頭を掻き回す無作法な手に、黙りこくっていた少女も抵抗を見せる。
「・・・レディの頭を何だと思ってるネ、」
「あん?レディ?そんな素敵なもんが何処にいるって?」
 けけけと憎たらしい笑みを浮かべる銀時に、涙目を隠すようにわざと怒った表情を浮かべていた少女の顔も。やがて仕方ないアルなぁと柔らかく緩んだ。
「銀ちゃんは女の子の扱いがなってないアルな!」
「俺位じぇんとるめーんな男もいないと言われる銀さんに何言ってんの」
 わかってないからモテないネ!と笑って逃げる少女を確保しようとするいつもの銀時に、新八はどこか安心したように嘆息した。

 大丈夫、ちゃんと笑ってる。

 帰りましょうと促し、先を歩き始めた新八と神楽を何とは無しに眺めてからふと気付く。自分は此処へくることなど誰にも言っていない。己でさえ予定していなかったのだから。気付けば此処へ来ていて、気付けば日が暮れていて、気付けば二人が怒ったような顔をして立っていたのだ。
「・・・・・・・・・・」

 ポリポリと頬を掻く。
 なにやら酷くむず痒かった。

「・・・お前等ってさー」
「はい?」
「何アルか?」

 振り返った、真っ直ぐにこちらを見上げる二対の瞳は濁り無く。

「・・・・・なんでもね、」



 直ぐに逸らした。


 どうして何処にいたって自分を捜し当ててくれるのかなんて、今更聞かない。




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