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新刊小ネタ
2012/02/28 12:21


 綱吉が拝み屋の話。

「陰陽師とか、そういう大層なもんじゃないよ」

 主に話して浄霊、つまり霊を浄化するのが仕事。除霊はしない。
 それがいつも依頼人に対する条件だった。
 大抵の人はその違いがわからないらしく、はあいなくなるならなんでもいいと頷いていた。ので、時々インチキと罵られることも多々だ。
 まあ見えない霊という存在をどうにかするという仕事なので、こういったことはざらだ。


「ですから、除霊はしません」
 仕事を受ける前に確認はした筈ですがとこういった手相に言っても仕方ないと知りつつ出来るだけ感情を乗せずに話すが効果は無いようだ。
 最終的に顔面にぶっ掛けられた茶を拭った頃には、依頼人は足を怒らせドアを閉めて出て行った後だった。
 これを何度か経験すると、流石に出すのが温めのお茶となるのは避けられない。決して貧乏だとかそういったことではない。
 溜息をついて眼鏡の水滴も拭き取っていると、上から偲び笑いが降りて来る。眺めていたのは知っているが、隠す気もないといらっとするのはなんでだろう。
 なので台拭きで卓上を片付けながら少しばかり愚痴を零した。

「お前もなあ、見てるんだったら助けろよ」
「いいのか?」
 すとんと隣に飛び降りてきたのは少年に、じとっとした眼を向ける。口達者なこいつなら、きっとああいう人でも黙らせられた筈だのに。
「俺は正直ものだからな、オメーが除霊が出来ないんじゃなくてしないだけの面倒臭がりだって言っちまうが。良かったのか?」
「あーはいはい妙なこと口走ってすいませんでしたねぇ」
 それでもいいなら代わってやるゾと妙にニヒルに子供が笑う。それが似合っている不思議な子供に、綱吉だけはいつも嫌な顔をする。
 

 いつも浄霊だけで、除霊はしない。

 そういう条件で依頼を受けるには訳がある。
 除霊に必要なのはそれに見合った知識、経験、実力。そういった諸々のものが必要なのだが、綱吉は全てを兼ね揃えた男だった。
 しかし代わりに意欲がない。これっぽっちもない。
 何故ならそれが面倒以外になにもなかった。強いて言うなら疲れるから。物凄く。

「んな理由でこんなもぐりの祓い屋紛いのことをしてるなんざ奈々が知ったら泣くんじゃねえか」
「いや母さんなら俺が元気ならそれでいってこないだ言ってくれたから別に」 
 両親共に既に他界していても然程悲しくないのは、今でも時々帰ってきてくれたりするからだ。
 そりゃあ死んでしまった時は悲しかった。でもその本人に泣かないでツー君とおっとりと言われてしまえば涙も止まるというものだ。まあ当然ながら身体は透けていたのだが。
「つーかな、母さんを慣れ慣れしく名前で呼ぶなよお前」
「俺と奈々は仲が良かったんだ。お前のことを頼まれる位にはな」
「嘘つけ。ただ爺ちゃんが怖かっただけの癖して」
「・・・・・・・・・・るせーぞ」
 
 隣でちょっと黙った少年に良い気味だと鼻を鳴らす。

 人を魅了してやまない黒曜石の瞳に長い睫毛。子供だというのにぞくりとするような美麗な顔立ち。細いが長い手足に成長過程だとわかる危うさが相まって、将来を余計に楽しみにさせるような紅顔の美少年である。
(見かけだけだけど、)

 見る度綱吉はこの見た目は幼い少年を恐ろしく思う。
 どんなに美しい容姿をしていても、コレは妖魔なのだから。








冒頭とかがこんなんです!
誤字脱字とか確認してないですがご勘弁をば!!(へこへこ

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