2019/08/15 14:05 厳格そうな黒髪の男が口を開き、その場にいたものたちはごくりと唾を飲む。今年こそは・・・っ!そんな想いが伝わってくるような必死さだった。 そんな中、1人だけ異様な男が1人。 掛布を纏っているので顔はわからないが、興味薄気に椅子の背もたれに寄りかかり、挙句欠伸を噛殺している。隣にいた持田はなんて暢気な奴だと睨み、次にこいつだけはありえないなと鼻で笑った。 が、その笑いは天界の覇者の補佐である男の朗々とした声により消えた。 「今年の栄えある“彦星”は、戦将コロネロとする」 「「なッ?!」」 ざわりと会場一帯がざわめいた。 まずあの黄金の鷹と言われた戦将がこの試験に参加していたことに対しての驚き。そしてあの血も涙もないと言われている男が“彦星”に選ばれたことに対しての困惑と憤懣の交じったものだった。 その1人である持田も同じように不満を口にしようとした、その時。 「ふっざけんじゃねえぞコラアアアア!!」 掛布を投げ捨て、椅子を蹴倒した男がいた。持田の横にいた男だ。先ほどのやる気なさげな気だるげな様子と打って変わって、爛々と煌めく瞳で黒髪の男をギッと睨んでいる。 (あれ、この男何処かで・・・?) あまりの怒りのオーラに気を飲まれたが、ふと持田はこの男に見覚えがあることに気付いた。誰だったかと思い出す前に、自分の横から眩い程の金糸が獅子の鬣のように風を切って消える。 「ふざけんなよてめえ、U世!!」 「何やってんだアイツ!?」 そして次の瞬間には壇上にて黒髪の男を締め上げていたことにぎょっとしてから思い出した。 「なんっで俺が“彦星”なんてくだらねえ役目やんなきゃなんねーんだコラアアアアッ!?」 戦将コロネロ。 彼が“彦星”に選ばれた、4年も前のことだった。 【 天の川もなんのその 2 】 「明日は曇りまたは雨・・・、か」 ぽちゃと、自分の浸かっている水から手を出し上に伸ばしてみる。一応清めの水浴びをしてはいるが、これも無駄になるかもしれない。 それを去年までだったら大いに喜んだかもしれないのに、なんだか今年は鬱々としている。 「じゃー、もう。会えないのか」 ぽつと呟いてからハッとし、ぷるぷると首を振る。 誰もいないことを確認してから勢いよく水中から飛び出した。 「なしなし!今の無し!!」 ふわと地に足をつけ、用意しておいた衣をさっさと身に纏う。手馴れたように最後に帯を結んで沓を履いてから頬をぴしゃと叩く。 「明日で晴れてお役目御免なんだから」 今日はツナが成人となってから迎える7/7。 天帝の言霊の制約が切れる日だった。 * 「雨天決行だぁ?」 comment (0) |