2019/08/15 13:58 「いや、こっちにはいないようだ」 「くそっ、お前は東の通りの方を当たれ!」 複数人の足音が遠く離れるのを待って、綱吉は詰めていた息を吐き出した。途端何ともいえないダルさがどっと全身を覆う。久しぶりに全神経を張り詰めていた為か、はたまたデスクワークばかりだったから単なる運動不足なのか。なんにせよかなり気力を消耗しているようだ。このままだと長期戦は大分厳しいだろう。 ちらと隠れた屋根から通りを見下ろし、まだうろついているスーツ姿の男に舌打ちしたくなる。まあそれよりも舌打ち以上のことをしたいのは別のスーツ男だったが。 「ったくいっつもいっつもアイツは・・・ッ」 今此処にはいない男に向かい綱吉は悪態をついた。 【 かくれんぼ 】 綱吉は逃げていた。 それは追いかけられているから。まあいつものことといえばそれまでなのだが、今日は相手の眼の色が違ったのだ。アレは間違いなく獲物を狙う眼だ。 綱吉はそれを見た瞬間理由も聞かずに背を向け、すらこらと取り合えず逃げ出した。訳を聞いてる暇があるなら逃げるべしと、超直感が告げてきたからだった。 噴水の裏で一息付いている時、綱吉はおかしなことに気が付いた。 (なんか、追いかけてくる人数。増えてない?) 初めは15、6人だったのに、さっきは50人位に増えていた。いやいやなんで? 勿論眼は皆一様だったので、イタリア最大と謳われるボンゴレのボスはそこで始めて真面目に考えることにした。 これだけでかいファミリーだ。ボスである自分に不満を持つ者がいたって少しもおかしくない。寧ろ自分みたいなのに付いて来てくれている奇跡に吃驚しているくらいだ。 ただ少し頭を冷やして貰ってから話を聞こうと思っていたのだが、あの人数は少しおかしい。精鋭であればボンゴレに乗り込みボスの命をとる位はできるぐらいだ。何か自分がしたのだろうが。 綱吉は此処最近の部下に対することなどを考えてみたが、特に今までと変わったことはしていない。まんねり化したのが不満だったのだろうか。 「いや何処の倦怠期不満が爆発した夫婦?」 「いたぞ!!」 「うげッ」 突っ込みが染み付いていたボンゴレのボスは自分の性を呪った。全くこうも突っ込み体質になったのは困った側近たちのお陰だ。筆頭としては、 「十代目ーーー!!待って下さい」 そうそう君だよ獄寺君。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「いやいやいやいやなんで獄寺君まで追いかけてきてんの!?」 おかしくない!?君の仕事一応俺の右腕だよね!? しかも眼の色が、今までの人達と同じだし! 綱吉は鬼気迫った形相の獄寺に蒼褪めて走り始めた。間違いなく掴まったら二度と日の目を見られない気がするのは何でだろうか。どっかに閉じ込められそうなんですけどあはは笑えない。 「はい俺は貴方の右腕です、でもその前に一人の男なんです・・・ッ!だから待って下さい十代目!悪いようにはしないですから!」 「意味わかんないし待ってられないからーーー!」 綱吉はボンゴレでは誰よりも速いと鬼教官に褒められた逃げ足で嵐の守護者を振り切った。 * 「あー・・・、流石に獄寺君はキツかったな」 節々の痛む体を爺むさくさすりながら今度は木の上で辺りの様子を窺う。流石に匣まで出されたらどうしようかと思っていたのだが、傷つける気はないらしいのでそれはなかった。 「いやあったら困るんだけどね」 他の守護者やリボーン辺りの過保護集団が知ったら恐ろしいことになる。少し思い込みが激しくて喧嘩早いが、中学からの友達なので命の危険には晒したくはない。 「それに怪我すると意外に骸とかが煩いしなー」 「当然でしょう。貴方の身体は僕のものなんですから」 「あははお前その台詞いい加減飽きないの・・・・って、なんでいんだーーーっ!?」 「クフフ久しぶりに子兎のような可愛らしい反応をしてくださって有難うございます」 直ぐ背後にいた霧の守護者に巨木から転がり落ちたツナは頭を打った。 この神出鬼没男め・・・・ッ! comment (0) |