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小話
2019/02/09 19:35

 着信アリ。
 恐ろしい映画タイトルを連想させそうだが、それとはまた別の背筋がスっと冷える怖さを感じた。
 
 いやいやいや。
 
 (俺、登録してねぇ、よ、な?)
 
 
 電子画面には、安室という文字があった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 【 着信アリ 】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あぁ、登録しといたんだよ」
「・・・へぇ〜、そうだったんだぁ」
 
 なに当たり前の顔して爽やかに言ってんだバーロー。
 
 無駄にイケメン、腕力ゴリラ。顔面以外は両津〇吉みたいな破天荒。
 コナンの中ではそんなかんじで有名な男の名前は、安室透。ポアロのアルバイトをやっている。
 ・・・のは、最早彼の中では嘘くさいにしかならない。
 こちらの引き攣った笑いに気付かないわけもないのに、素知らぬ顔で珈琲をカップに注いでこちらも見ない。・・・腹立つなぁ。どんなことでも様になっているのがまた腹が立つ。何でも出来て顔までいいとかどこの出来杉くんだよ。
 人のことなど言えない見目の整った少年、今は江戸川コナンと呼ばれる少年は、面白くなさそうに頬杖をついた。直ぐに上からお行儀が悪いよコナンくんと声が降ってくる。何だかんだ育ちの良いコナンは渋々と姿勢を直した。
(妙な所で素直な子だよなぁ)
 
 それが聞こえたような、不満気なじとりとした目線に、ふふと悪気なく安室が笑う。
「コナン君だって、僕の連絡先とか知っておいた方が何かと便利だろう?」
「・・・それなら、普通に教えてくれればいいのに。それに、安室さんが僕の番号を知らないのも不便じゃ」
「それなら大丈夫。僕はもう知っているからね」

 にっこり。
 
(こっっっわ!)
 薄ら寒くなった腕を摩りたいのを堪えた。
 微笑むだけできゃあきゃあと背後から女子高生が騒ぐ声が聞こえる。余計に苛立ちが増した。これだからイケメンは!
 お前が人のこと言えた義理か、アホぉ!と誰かにつっこまれた気もするが、それは無視する。
 笑顔で差しだされたカップを受け取るのが精一杯だったが、顔面の全筋力を総動員して飛び切りの笑顔を返した。
 
「────そっかぁ、僕全然知らなかったよ。ありがとう、安室さん」
 
 ──そのお綺麗な顔面にいつか絶対に蹴りを入れてやるからな。
 今に見てろよと、心に決めた少年の笑顔は酷く美しく、対する男を逆によろこばせていることには気付いていなかった。
 
 
(──うん、やっぱり君は興味深い)
 
 
「どういたしまして、コナン君」
 
 
 
 
 
 
 楽しみで仕方ない。
 心から湧き上がる衝動をちらとも見せずに、二人は笑いあった。
 
 
 
 

 
 終
 
 
 
 
 
 
 









「・・・なんか、この部屋寒くありません?」
「都内も雪ですしね〜」
「いや、そうじゃなくて(二人の空気が)」
「あ、風邪ですかね?早めに上がっていただいても大丈夫ですし。それかちょっと待っていただけたら送っていきますが」
「えー・・・と、マスターに言って早めにあがらせてもらいますねー」
「そうですか?(大丈夫かな・・・)」
「あれ〜?安室さん梓さんに引かれてるー?」
「え!?」
「ちょ、コナンくん!ほんとのこと言わないで!」
「梓さん・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 女性に気遣いを見せる安室は同僚の梓さんから胡散臭いイケメンだと思われててもいいな、うん。

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