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小ネタ
2013/03/30 19:12




 夢を見た。

 妙にリアルで生々しくて。どちらが現実なのか、わからなくなったくらいだった。

























「はよー」
「・・・・・・・おー」

 よっこらせとおっさんくさいことを言って、隣にどかりと座る。
 橙の髪が揺れ、こちらを見た。

「何アルか?」
「いや、」

 別にと言いつつまだ眺めることに、不思議そうな顔をする。それから手が伸びてきて、俺の前髪をかきあげた。こつりと額がぶつかる。

「――なにしてるんでい」
「熱でもあるのかと思って」
「だったら喜んで保健室行ってら」
「だよなぁ」

 ひょいと肩を竦め、あっさりと離れる。近かった蒼い瞳が遠ざかることを、名残惜しいと感じてしまったのは、夢の所為だけだろうか。

「・・・・・・保健室行ってくる」
「は?」

 やっぱり駄目かもしれない。そう言ってから教室を出た。きょとんとしたアイツの顔が見れないなんて、相当だろう。



(いくら昨日、あんな夢見たからって、)




「これはねーだろぃ・・・・・」







 アイツが近付いただけでこんなに体温が上がっただなんて、信じたくなかった。 
 ばくばくと煩い心臓がうっとおしくて舌打ちをした。









【 沖田君と神楽君 】









「・・・・・・・・・・なのになんで来るんでぃ」
「だってお前いない授業とかつまらないアル」


 枕に突っ伏して、もうやだこの野生児と呻く。わざわざ避けたというのになんですり寄ってくるのか。
 持ち込んだらしい食べ物を広げつつ、口を尖らせる。


「だってお前の様子が変だったから、心配だったネ」
「・・・・・」


 現実のこの親友は、夢で見た少女とは違って妙に素直だ。いや、夢の中でだって本当は、俺以外には結構可愛い子だったのかもしれない。

(旦那の前とかだと、とかな)


 自分で考えた癖して面白くなくなった。
 しかしちらちらと此方を気にしている親友に、少し申し訳なくなったのもあったので、仕方なく口を開いた。


「昨日夢を見たんでぃ」
「ふん?」
「俺が警察?みたいなので、お前が何でも屋みたいな、あやしげーな店で働いてんの」

 ついでにお前は帰国子女で不法入国者らしかったと言ったら、くりくりとした瞳が丸くなる。元々幼い顔立ちだが、こうするとそれが顕著になる。
 ばりっとまた菓子の袋をあけながら、話を聞く。ここが保健室だということなど知ったことかといった様子だった。

「まじでか」
「そんで、笑えることにお前と俺はめちゃくちゃ仲が悪い」
「ほう」
「更に言えばお前は女だった」
「ほー、それならさぞかし俺は可愛い女の子だっただろうネ」
「いんや凄い生意気なぺちゃぱい」
「なんだとー」

 性別が逆転していたと言っても所詮夢のことだとけらけら笑って流している。快活に笑うコイツはなんだかんだとモテていることを知らない。付き合う気も全くないという。それよりも俺とつるんでいた方が楽しいと言ったのはこの間だ。それが結構実は嬉しかっただなんて言わないけども。

 今となってはなんだかそれが別な意味に感じていて落ち着かなかった。

「職業柄ってことも上司が不仲ってこともあったんだろうけど、顔を寄せれば合わせば乱闘騒ぎなんでさー」
「銀ちゃんとか新八辺りが苦労してそうアルな」

 想像でもしたのか、楽しそうにしている。
 まぁ現実味なんてないだろうし、普通はそんな反応だろう。

 だがしかし。



「でもそれには理由があるようなんでぃ」
「うん?」
「どうやら俺は女のお前に惚れてたようなんでさぁ」
「ぶッ!」


 そこでやっと食べるのを止めた、というよりは喉に詰まらせたらしい親友に、ベットに転がっていたペットボトルのお茶を差し出して背中を擦ってやる。
 

「大丈夫ですかぃ?」
「おま、いくらドSだからって、」


 ごっごっごッと男らしく飲み干し、恨めしそうにこちらを見る。うん、いつもと変わらずなルックスだ。
 の、筈なのに。


(――どうにもブレて、仕方ねぇんだよなぁ)




 あの、夢に出て来たチャイナ服を着た少女に。




「総悟?」
「・・・・・・・・・・」





 上半身を起こして、向き合ってから、口元に付いていた食べカスを拭ってやる。ついでに、頬を撫でてみる。予想以上にそれは円やかで。
 気付けばぺろりと舐め上げていた。
 するとぐいと引き剥がされる。胡乱な眼をした神楽が見ていた。


「何やってるアルか」
「わかんねーかぃ?」
「わからいでか」
「ただのマーキングでさぁ」
「・・・・・・」







 酷く嫌そうな顔が、夢の中の表情と似通っていて、もっと見たいと思ってしまった時点で決まっていたのかもしれない。
 どうやら俺はコイツに惚れてしまったらしい。









 *










「――――で?」
「っていう夢を見たんでさぁ」
「いやそれはわかったんだけど、なんで俺がそれで手錠されなきゃなんないわけ?」
「ロリコンは犯罪ですよ旦那」
「うるせーよ誰がポリゴンだよ、大体なんでだからって俺がこんな状況?おかしくない?」
「チャイナと旦那が同棲してるって状況に今更ながらにいらっとしまして」
「いらってしてるのこっちだからねカチン通り越してもうこれ爆発寸前だからね」
「なんにせよ夢でよかったかなって今は思ってるんでさぁ。じゃなきゃチャイナと ●●ピー● なことも ●ピー●●● も ●●● も出来なかったし」
「もしもーし大串君?あんたんとこの歩く18禁早く回収に来てくんない?」
「まぁ、別に中身がチャイナなら野郎だろうとなんだろうといいんですけどね」
「神楽ちゃん逃げて、超逃げてええええええええええ!!」








 この後、手錠をされ馬乗りになられた銀時と、黒い顔をした沖田を発見した神楽により、万事屋は暫く営業停止になったとかならなかったとか。


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