催花雨


 
「こんなつもりじゃなかった」
道中、情けない声をあげたり、駄々っ子になったりするカリナの背中を押して歩くのは大変だった。
「じゃあどういうつもりだったの?」
「もっと真っ暗闇の中の大冒険だと思ってたのに!」
お荷物になったランタンがガチャガチャと騒ぐ。ずいぶんとたくさん用意したものだ。半分は照明器具だったとは。
「まあこんなに明るいなんて……入口のアレからは想像できないわよね」
木漏れ日に似た柔らかな光に包まれていた。樹木で作られたトンネルみたい。これは外から想像つかなかっただろう。一度来たといっても真っ暗の入口から数歩しか知らなかったら殊更。しかし、ほんと、この建物はどうなっているんだろう?
「一本道なんだね」
「それもつまらん」
「あはは……」
もうすっかりヘソを曲げてしまってる。その様子がヴェラにとっては最高に面白いらしくて上機嫌で先頭を進んでいる。ひとり、入口からもうずっと真っすぐ歩いているが終わりが見えないことに不安を覚えた。
「まっすぐでどこまで行くんでしょう?」
「さあね」
「まだ真っ暗がくるチャンスあるかもしれませんよ」
「確かに、それもそうだな。頭いいね、いいとこに気づいてくれた」
「期待しないほうがいいと思いますけど」
機嫌をなおしてもらおうと適当に振ったまで、それでも彼女の目は輝きを取り戻して、足取りは幾分か軽くスキップ調に変身していた。
「ヴェラはどうだろう?」
「ずっと先を歩いてくれてますよ」
「なにか楽しそうだから、きっといいことがあるんだろうなあ」
ヴェラはあなたがおかしくて仕方ないんですよ、と言うのは喉元にとどめてあげた。
 

拍手 戻る



×
「#甘々」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -