催花雨


「これ、これになにか感じないか?」
「なにも」
「じゃあこっち」
広げられた地図や本を指さし聞いてくる。挙句、拾った石まで。正直、鬱陶しさを覚え始めたところで助け舟を出してくれたのはヴェラだった。いや、親切心が含まれているのかはわからない。ただ単に焼きもちなのかもしれない、一人だけ蚊帳の外に置かれた。カリナがいうには執着するらしいから――やっぱり恐い。
「はいはい、どうしたの? あー膨れっ面も可愛いぞ」
ああ、確かにりんご飴みたいだ。
なにもない場所。カリナがそう言った場所はなにもないわけではなかった。大きな廃墟――があった。
「ところでここに入るの?」
「ほんとになんも感じないか? お前みたいのはみんなここへ入っていくぞ」
どんなに問い詰められようとピンとくるものがない。ため息だけが漏れた。
「連れて来ればわかるかなあって思ったんだがなあ……」
こちらだってわかればどんなによいか。視線を伏せると、
「では中に入ってみるか?」
「え?」
軽い。調子が軽い。
「一応聞いておくけど、入ったことあるの?」
「一回だけな」
「ちゃんと入ったの?」
「そこにある入口は跨いだ」
なんとなくわかってしまった、それはきっと――。
「一歩だけって、それくらいでしょ」
「いや、少なくとも三歩はいったね」
盛大な溜息が漏れた。カリナの勝ち誇ったように上ずる声が癪に障る。くだらないことに乗った自分にも。
「クルスが選べばいい。行くと決めればオレはくっついていくよ。ヴェラ達に役に立つと認められたオレだよ」
ぷっ、笑った小さな破裂音が背後からした。ヴェラがお腹を抱えていた。ツボったのか、小刻みに震えている。
「ヴェラはどうしたんだ? 大丈夫か?」
「大丈夫だと思いますよ。おかしいだけでしょ」
「よくわからんが……で、どうする?」
「ここまで来たんだからいくわよ。行くつもりで来たのではないの?」
満点の回答だったようでカリナはにんまりと笑った。
「じゃあ行こう!」

 

拍手 戻る



×
「#切ない」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -