ウィーチューリップ!
〜恋する年頃宣言〜


「貴方が好きなの」

決意を秘めたその目は真面目な恋愛を求めるというよりも他の者に取られまいとした焦りが入っていて
反吐が出そうだとローは思った。
そもそも女に優しくした覚えはない。
俺は嫌いだ、その返事に女は「私の何が悪いっていうの」「他の女がいるのね」と予想通りにぎゃあぎゃあと騒ぎ始め、
屋上とはいえ眼下の下校者の何人かが首を傾げてこちらを見た。
鬱陶しいと睨み付ければ蜘蛛の子を散らしたように退散した。
まぁ、人生に関わる汚点を握ってるから(俺が)正しい判断だろう。
近付いて手を振り上げた女を視界にいれながらローは自身についてと女についての考えを塗り替えた。

って事があったんだよユースタス屋。
食器の音や会話がその広過ぎる空間を駆け巡るそこで、ローは身振り手振りで叩くふりをした。
ではこの変態悪趣味の髭面と先程話題に上がった女には何もなかったのか。
いやそれこそなかっただろうとその場で話を聞いてやりながらキッドは苺オレを啜った。
情がある人間ならば一度位叩かれる事に自身の反省も兼ねて抵抗はしないだろうがキッドと関わるローという男は
基本的に自分が特定以外の人間によって傷付けられる事を嫌う。
故に眼中にもなかった女からの攻撃を避けたはずだ。現にその顔に紅葉は咲いていない。
話を受け身として聞いていたキッドは何で俺はこんな奴と向かい合って飯食ってんだと眉を顰めたが
この場から動き出すのも億劫だったので止めた。
それに高校に入ってから早3年経った卒業間近な自分等が今更互いに離れたところで何になるのか。
メリットは何一つとして見つからない。
キッドが目の前に置いていた肉定食もとい学食のハンバーグにフォークを突き刺しながら
ローに目線を移すと、隠す事も無く訝しげな表情を浮かべたローが机の上に身を乗り上げた。
浅黒い手が目の前でちらちらと振られ、何だよとキッドは呟いた。

「ユースタス屋。聞いてたか?」
「聞いてねぇ」
「だろうな」

折角俺が面白い話してやったのによー、そう押し付けがましくぼやいて頬を膨らませたローの左頬を
キッドが空いた手の甲で叩く。

「てめぇもう18だろ。頬膨らますな気持ち悪ィ」
「じゃあそんな俺と今会話してるユースタス屋も気持ち悪いな」
「よし歯ぁ食いしばれ」

一発に込められた鉄槌がローの脳天にヒットした。


-*--*--*--*--*--*-


って事があったんだよなぁユースタス屋。
数年前の記憶と今の一言の断片が脳裏でリンクする中、唐突に話を振られたキッドは顔を上げた。
ファッション雑誌に引かれていた意識を学生時代に引き戻して、そんなことを話したような気がすると
答えるとローはニヒルに笑って「なんだそれ」と呟いた。

「だって3年も前だろ。付き合う前じゃねぇか」
「冷てーな」
「ほざけ」

顔を近付けたにんまり顔を鬱陶しそうに手で払うキッドに些か頭にきたらしいチェシャ猫もといローは
薄く筋肉のついた両腕を伸ばして彼に抱き着いた。
感情に任せての抱擁であったためだからかキッドの掌に収まっていた雑誌の一部がくしゃりと、
そして押さえきれなかったキッドの体躯が重力に向かってどさりと床に倒れ込む。
ローの行動に抗議の声を言いかけたキッドを嗜めるように、ローがその薄い唇に口付けた。
角度を変えて何度も何度も押し付けるだけのそれにキッドが瞼を震わせる。


「可愛いなユースタス屋は」

ぐるぐるとそれこそ猫のように耳元に響く声が押し倒されたキッドには毒に感じられた。
危機的本能が瞬時に反応してローの横っ腹目掛け色白の脚が振り上げられる。

「馬ッ鹿、やろ!」
「ぐ」

案の定膝が勢いよく目掛けた位置に入り込み、そう言えば3年前もこうだったとキッドは起き上がらせた身体を震わせて笑った。
正直、あの頃の自分はまさか3年経っても未来の自分がトラファルガーと共にしているなんて思いもして無い筈だ。
と、その時。

「…」
「ユースタス、屋?」

黙り込んだキッドにローは首を傾げる。
機嫌を損ねたか、具合が悪くなったか、はたまたそれ以外かと冷や汗をかきはじめる髭面を余所に
キッドは心臓あたりに感じるふわふわとした感覚は一体如何なる名称が当て嵌まるのかと頭部を掻いた。

「トラファルガー」
「ぁ、ユースタス屋?」
「…ロー…」
「!?」

ユースタス屋が名前呼んでくれた!そうローが顔を輝かせるとまたもややってきた心臓の熱さに、
取り敢えず恋とかいうものではないと結論付ける(既に恋人同士であるというのもある)。
そして又黙り込んだ。
それに比例してローが落ち込む。
キッドが黙り込んだ時間、総計20分。
落ち込みに落ち込んだローが復活するまでの時間、30分。
結局何を考えていたんだとやつれた顔でローがキッドに言及すると、嗚呼、手を打って呟くとキッドは


「俺、幸せなんだな」


そう嬉しそうに笑った。
これによりローがキッドに抱き着くまでの時間。



3秒。



アイラブユーは突然に
(Are you happy?)


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龍の住む街の、蒼羅龍希さまから素敵な小説を頂きました!
この糖度、ま さ に プ ラ イ ス レ ス … ! 幸せすぎます…結婚してまえ!!!
お互いがお互いを好きすぎて、暫く布団の上でもだもだしてました///!!こちらが恥ずかしくなるくらいラブラブでもう…わたし、ロキド好きで良かったです…。
高校生の二人も何だかんだで仲良しなところがまたニタニタしてました…学食を一緒に食べあう仲から恋人へとどうやって進展したのか個人的に気になるのですが…妄想で補えというロキド神からのお告げだと思うので脳内で妄想…ゴホン。想像してまたにやけたいと思います。私は変態ではないです。

蒼羅龍希さま、本当に有り難うございました!


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(お題配布元/空想アリア)

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