苦い幸せ



 ※時差とか携帯とか国際電話とか全然考えてません あしからず!




「あっ!ポルナレフ!!」
ななしはそう言って無邪気に俺のほうに手を振る。人の気も知らないで....
くそっ。空港だけあって人が多い。
そんないら立ちを覚えつつ、人込みをかき分けななしのところに向かう。
やっとたどり着いたところで、お互いにあいさつを交わした。

「わーい!久しぶりポルナレフ!元気してた?」

「ん、まあ、それなりにな!...じゃなくてお前、急すぎるだろ...」

と俺は当然の愚痴をこぼした。


それは約一時間前にさかのぼる。
突然、携帯に見覚えのない着信が入った。とりあえず出てみると、懐かしい声が耳に響いた。

『あ、ポルナレフ?良かったー!出てくれて』

ななしだった。
...ななしは約三か月前、エジプトでの死闘をともにした仲間の一人である。
DIOを倒した後、ななしは承太郎たちとともに日本に帰り、俺とはそれっきりであった。
それが突然、本当に突然ななしから電話がかかってくるなんて想像もしてなかった俺は、驚きで二度見ならぬ二度聞きをした。

『もしもーし!聞いてる〜?』

携帯からはななしの声の後ろではざわざわと大勢の声も聞こえてくる。

「お、おまえ...ななしなのか?」

ハッと我に返った俺は声の主に、いまさらな質問をした。

『当たり前じゃん!もう、忘れちゃったの?』

「いや、確認のために...というかななし、突然何の用だ?」

『んー、今ね!フランスの空港にいるの!だからさ、迎えに来てくれないかなーって』

ん?
....................ん?
いまななし何て言った?フランスの空港?え?聞き間違い?

「フランス、の空港...?」

ゆっくりと聞き返す。

『そう!フランスの空港にいるの!』

ななしはこっちの動揺に気付かないくらいにハイテンションで話してくる。
......なんで?日本にいるはずのななしがなんでフランスの空港にいんだよ?
考えることが多すぎて俺のちっぽけな頭の回線はパンクしそうになっていた。

「は!?お前なんでフランスにいるんだよ!!?」

とりあえずななしに俺の頭を支配していた疑問をぶつけた。

『そういうもろもろは後で話すからさ、とりあえず来てもらってもいい?もうすでに迷子なんだ...』

言いたいことはたくさんあったが、ななしは放っておくと一人で突っ走ってしまうタイプだということは旅の中でも嫌というほどわかっていたので、とりあえず、そこから動くなよ!と忠告をして電話を切り上げ、空港に向かった。




「で?なんでお前突然フランスなんかに来てんだよ」

先ほどの愚痴に続けて俺は一番知りたいことをななしに投げかけた。

「えー、いやその、久しぶりにポルナレフに会いたくなってきちゃった!それだけだよ!」

こいつマジで言ってんのか...そんなセリフ俺でも言うのを憚るレベルだぞ...まあうれしいけど。
でもその言葉を証明するかのように、ななしの手には全く荷物と言っていいものがなかった。こいつどうやって来たんだ。
ななしの行動力とかにはもはや感動するものがある。

「そんな恥ずかしいセリフよく言えるよな...」

そう言ったものの、ななしは全く無意識でそういう言葉を吐く節があるため、意味が通じていないようだった。

「というかお前どうやってここまで来たんだ?」

「んとね、今外出禁止令が出てるから、学校行くふりして空港行ってビューンと...」

!?
どうやらななしの行動力は想像以上だったようだ。

「おま、てことは両親はここに来たこと知らないのか...?!」

「んーまあそうなっちゃうね!たぶん察しがいいから学校に行ってないことは気づいてるかもしれないけど」

あーあ、おこづかいまた減額されて外出禁止ものびるなー...なんてななしは呟いているがそういうことではないと思う。

「と、とりあえず両親には連絡しとけ!!」

そう言って俺は先ほどの携帯を差し出す。
ななしは素直にそれを受け取ると、ありがと、と一言言って番号を打ち始めた。どうやらちょっとは罪悪感を感じていたようで安心した。
...国際電話は値が張るが仕方ない。
そんなことを考えていると、電話を終えたななしが俺に携帯を突き返してきた。

「怒られた!おこづかいなし+外出禁止半年だって!」

そう一言ハツラツと俺に言った。いや知らねえよ...

「...お前この後どうするか決まってないんだろ?とりあえず仕方ないから俺の家に行くか」

俺がそう言うとななしの目は輝いて、ポルナレフの家見てみたい!!なんてはしゃぎだした。前から思っていたがとても高校生には見えない。
お小遣いや他人の家なんかに一喜一憂していて疲れないのか、なんていう余計な心配もしたくなるほどだ。

「なんかいろいろありがとうねポルナレフ!」

満面の笑みで俺に向かってななしが放ったセリフ。
その笑みに胸の奥がキュン、とした気がした。
大の大人がキュンなんて恥ずかしいにもほどがあるけど、こいつには人を引き付ける何かがあるのだろうか。
スキップで人込みを突き進むななしを追いかけつつ、そんなことを半ば真剣に考えていた。
とりあえずこの後はしゃぐななしをどうやって落ち着かせるか一番に思案しなければならないな、と思わず苦笑いに近い笑みがこぼれた。




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