It I was finally come upon.




「一、誕生日おめでとう」

端末越しに聴こえた瑠璃の声は優しくもなんだか物足りなく感じた。
ありがとな、と俺が返すと瑠璃はフフッと笑った。

「どうかしたか?」
「んーん、及川より先に祝えたの、嬉しいなって」
「そりゃ日付変わる前から電話してんだからそうだろ」

時計を見ると午前0時1分。約10分前に電話をしてきた瑠璃は、そのまま話し続けて一番に祝ってくれた。

「今電話切ったら、バレー部のグループ通知すごそうだな」
「そしたら一、たぶんそっちでずっと話してそのまま寝ちゃうでしょ。男同士の会話の方が気兼ねないだろうし」


だから、もうちょっとひとりじめさせて。

そう切なそうにぽつりと溢した瑠璃の声は、やっぱりなんだか無機質で。あぁ、俺が求めてる瑠璃の声は、コレじゃどうしようもないんだな。


「そうかもしれねぇな。とりあえず1回あいつらと話するから切るな。またあとで」
「えっ、またあとでっていつ…」

ブツリと電話を切ると、部屋着のまま玄関まで行って靴を履く。親に何処に行くのかと問われて、「彼女のところ」と言うと目を丸くして見送られた。


家を出て、メッセージアプリを開くとやはりチームメイトからのたくさんのメッセージが届いていた。"ありがとな"とそこに打ち込むと、そのままポケットにそれを突っ込んで走り出す。


チームメイトには申し訳ないが、今求めてる声は、温度は、アイツのもので。どうしようもなく逢いたくて仕方がない。


午前0時21分、瑠璃に電話をかける。

「外、出れるか?」


15秒後、ドアを開けてこちらを見てぽかんとしてる瑠璃を見て、思わず口許が緩んだ。
腕を広げると、泣きそうな顔で飛び込んで来る。じんわりと柔らかい体温を感じながら、それを逃がさないように、ぎゅっと抱き締める。


「誕生日、おめでとう……、はじめ」


あぁ、俺が最後まで欲しがるのは、やっぱりコイツなんだろうな。




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2015.06.10 Happy Birthday
Hajime Iwaizumi






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