入部届



入学して3回目の登校。女子ともちょこちょこ話ながら今のところ順調な学校生活だ。3日でなにか起きたほうが怖いけど。
しかし、部活見学で悩んで決めると言っていたのが嘘のように男子バレー部への入部の方針が固まってしまった。楽しそうではあるけれど。不安なのはやはり及川さんのファンだ。キャーオイカワサーンでしょ?大丈夫?
悶々と考えていたら放課後になっていた。部活解禁も近いし早く出さないとな。

「勇くん、入部届書いた?どこに出せばいいのこれ」
「おー、もう昨日出してきた。顧問に提出すれば大丈夫だって」
「まじか。勇くんよかったら着いてきてくれない?」
「いいぞ」
「ありがとー」

勇くんと今日のことについて話ながら歩き体育館へ向かう。勇くんは素直だから友達とは正直に話したい私としてはとても話しやすいのだ。らっきょのくせに犬みたいでかわいいやつだわ。

「あっれー金田一と清河ちゃんじゃん」
「及川さん!」
「これからうちくるとこだった?一緒に行こっか?」
「心のそこから遠慮します」
「まぁそう言わずに〜」

なにがなんでも一緒に行くんじゃねーか!質問の意味!
「清河ちゃんマネージャー志望してくれるんだよね?『及川せんぱいっ』ってタオル渡してくれるんだよね〜楽しみだなぁ」
「及川さんにゴワゴワタオルをあげて肌ガサガサにするのを目標にしますね!」
「ホント後輩なのになんて子だ!」
「瑠璃おまえほんと物怖じしねぇな…」

勇くんのその言葉に及川さんはなにを考えてるのかわからないにんまりとした笑顔を浮かべた。

「そういえば、下の名前、瑠璃ちゃんって言うんだね?」
「呼ばないでもらえますか」
「瑠璃ちゃ〜ん瑠璃ちゃ〜ん」
「私友達と尊敬する人以外に呼ばれるの嫌なんです」
「うん今俺のこと友達でもなければ尊敬してもいないってさりげなく伝えてきたね!?」
「今のがさりげないと思えるなら及川さんは意外と鈍感さんですね」
ニブ川さんかな?と思いながらまた喚いてる及川さんをスルーし、宥めようにもどうすればいいかわからない勇くんを連れながら体育館に着いた。
近くに居た溝口さんに声をかける。

「お忙しいところ失礼しまーす。1年の清河です。マネージャー希望で入部届出しに来ました」
こちらを向いた溝口さんはそら画面や紙面で見るのより断然かっこいいお兄さんであった。年上派の私はちょっとときめきますぞフフフ!

「おっ来たなぁマネージャー希望!コーチをやってる溝口だ、よろしく。及川の彼女か?」
「勘弁してくださいよ。溝口さんの彼女になら喜んで立候補させていただきますので」
「……!?瑠璃……!?」
「ちょっと清河ちゃん俺より溝口くんってどうなの!?」
口が達者だな!とワハハと笑った溝口さんは途端に少しだけ真剣な目をして、それでも口元と声は穏やかに尋ねてきた。
「そんじゃ、ちょっとお前が出来ること教えてくれ。マネージャーってタオル渡す〜とかドリンク配る〜ってだけの仕事じゃねぇんだよ。ぶっちゃけ雑用ばかりだ」

知っとるわそんなん。でもこんな愛しいキャラたちが全国目指してるなら応援するしかないだろう。

「バレーは見るのは好きですけど細かいルールとかはからっきしですし、きっとわからないことも多いと思いますけど……勇く……金田一や国見はもちろん、部員の皆さんが出来るだけ練習に集中して、全国に向かえるようお手伝いできたらと思います。一人暮らしなので掃除、洗濯、料理の家事は一通りできます。洗濯は手洗いも。得意料理は肉じゃがです。…………って感…じで……よろしいのでしょうか……」

真面目に話していたが後半なに言ってんだ自分と思い恥ずかしくなって小声になっていく。
すると溝口さんは私の手の入部届を抜き取り、そのまま頭を撫でてきた。

「及川の彼女とか及川狙いとかだったらかなり困ってたんだが、そうやってちゃんとバレー部を見ようとしてくれてるんなら大丈夫だな」
わしわしと撫でられ頭はボサボサだが、普段撫でられない為撫でられたことと認められた言葉が嬉しくてにんまりしてしまう。
「ありがとうございます!」




「そっか、よかったな、ちゃんと入部出来て」
「うん!勇くんとあきちゃんのおかげだね!」
「岩泉さんに頼み込んだしな」
「あんな必死な国見はなかなか見れねぇぞ」
あきちゃんとも合流し、三人で下校する。またもなぜか私が真ん中である。私だって決して小さくないが二人がデカイから宇宙人の気分だ。

「部活明後日の朝から参加いいって、岩泉さん言ってた」
「まじか!楽しみだな!」
「ん、おっ朝?」

……すっかり忘れていた…………そうか、運動部だから朝練があるのか!!!朝苦手で二度寝かましてバイトも遅刻することあったような私に早朝から活動なんて何年ぶり……………起きれる自信ない!!!

「ゆ、勇くん、あきちゃん、お願いがあるんだけど、毎朝モーニングコールくれない…?」
「「は?」」
「朝苦手で全然起きれる自信がないの……一人暮らしだから起こしてくれる家族もいないし…」
「そこは気合いで起きろよ!!」
「いや一度起きるけど二度寝かましたりするの……」
「それモーニングコールも意味あるの……?」

たしかに。しかしちゃんと覚醒すれば基本動けるのだ。ちょっとスイッチが重いだけで。
「でもやってもらわなきゃどうにもならないし、お願いしたいかな……あ、うちここなんだ」

うんうん話してるうちにマンションの前に着いた。近いから通学路短いなぁ。

「ちかっ!お前この近さで朝練遅刻はないだろ!?」
「だって朝目覚め悪いから〜……」
「……めっちゃ鳴らすからちゃんと起きてよね」
「がんばります……」

そんなわけで二人と連絡先を交換しました。LINEとかじゃ起きれる気がしないから電話番号も。
「ありがとー!明後日からよろしくお願いします!!」
「寝坊したらなんか奢ってもらうからな」
「エッ」

絶対起きる。




- 6 -


[*前] | [次#]
main

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -