答え合わせ



「で、答えは出てきたかな?清河ちゃん」

昼休み、屋上で勇くんとあきちゃん。及川さんのその言葉に私は口ごもった。結局昨日、これを考えてて眠れなかったのだ。

「えっと、その、答えってのは、その、自惚れのことでいいんでしょうか?」

クスリと及川さんが綺麗に笑う。

「ふぅん?自惚れになったの?」
「あっそういうのやめてください。本当に自惚れだったらすごい恥ずかしいじゃないですか」

そういうことが自惚れってあまりに恥ずかしくないか。すごい美人とかならまだしも私みたいなのが自惚れとか。
と思ってると、あきちゃんがお箸を弁当箱に置いた。

「瑠璃」
「あきちゃん…?」

珍しくキッとしたあきちゃんの目に少したじろぐ。

「お前は、岩泉さんのことが好きなのか?」
「えっ!?」
「ちゃんと言えよ、瑠璃」

あきちゃんに続いて勇くんにも問われ、恥ずかしさやら怯えやらで視線を手元にさ迷わせる。
こう、男子相手に(しかも三人も)好きな人を伝えるなんてことは初めてだ。どうしても緊張してしまう。


「清河ちゃん、宿題って言ったでしょ?」

及川さんのその一言に、私は白旗を上げるしかなかった。


「……はじめさんのことが、好きです。それで、は、はじめさんも私のこと……が……」

わああああやっぱり恥ずかしい!!!自惚れだったら嫌じゃん!!!恥ずかしい!!!

「……ちゃんと気付いてるのか」
「あきちゃん…」
「お前が自分の気持ちにも岩泉さんの気持ちにも気付いてなかったらどうしようかと思った」

あきちゃんはいつものように目を落ち着かせて、私の頭をくしゃりと撫でてきた。

「国見とな、心配してたんだよ。お前がちゃんと気付いてやれるのか」

勇くんは苦笑しながら私の背中をぽんぽんと叩いてきた。

二人のあったかさにどうしようもなく泣きそうになって、それを飲み込むように手元にあったお茶を飲むと、熱くなった喉を冷やしていく。

「なぁんだ、ちゃんとわかったんだね。よかった、大事な幼馴染みがまったく靡いてもらえてなかったらどうしようかと思ったけど」
「あーーもうそういうこと言うのやめてください恥ずかしい…」

やっぱり合ってるんだな、両想いなんだな。恥ずかしいな。うれしいな。


「んじゃ、大事な娘の恋は応援しなくちゃな、国見」
「わかってる」

「…えっと、私はじめさんと付き合わないよ」
「「は?」」

だっていつ消えるかわからない不安に駆られながらお付き合いだなんて、あまりに失礼すぎる。

「お前何言ってんだ?両想いなんだぞ?」
「そうだよ清河ちゃん、もう完璧に脈しかないんだよ?」

「、両想いだからって付き合うのは、また違う気がします」

付き合わないと言ってもなんでなんでとまくし立てる三人に、説明のしようがなく、私は屋上から逃げ出した。

走って、走って、疲れて歩いて、申し訳ないことをしたなと思いながら教室に向かおうと廊下を歩いてると、このタイミングではじめさんが向かいからやって来た。本当になんでこのタイミングで。

はじめさんはクラスの友達らしき人達と話ながら歩いていて、これなら気付かれずに通り過ぎれるかもしれないと廊下の端に寄りながら歩いた。


「お?清河じゃねーか」
「!?」

その努力もむなしく気付かれてしまった。どうやって逃げようか。

「あ、の……次体育なので失礼します!」
「は?オイ!」

がしりと腕を掴まれ、思わず引っ張ろうとするが、はじめさんの力にかなうはずもなく、足を止めることになった。

「わり、俺コイツに部活のことで話あるから先戻っててくれ」
「あー、りょーかいりょーかい。遅くなんなよー?」

はじめさんは友達らしき人たちと話すと、こちらに向き直った。



「さて、俺を見るなり逃げようとした理由でも聞かせてもらうか」


どう話せというんだこれ。




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