「……っ」 「ダメダメ、そんな笑顔じゃまだダメだからね?!」 そう言って私の頬を親指で押し上げる友達。 私は良く言えばクール、悪く言えば無表情。そんな女なんです。だから、今日までだってこんなに友達と頑張ってきたのに、一向に成果が表れない。 「ほら、今日が本番なんだからね?!」 「わ、分かってるけどさ」 「幸村くんにプレゼント渡すのくらいおもいっきり笑えるようにしなよ!!」 そう、今日は彼氏の精一の誕生日だ。だから、今日プレゼントを渡す時はいつも無表情だって言われがちな私じゃなくて、笑顔が似合う女の子になって渡したかった。 「ほら、もう一回!!」 あの王子様な幸村精一の彼女が無表情なんかだったら、さすがに精一ももっと表情豊かな子を好きになっちゃうと思う。 そりゃ、私だって精一が大好きだから頑張って笑えるように努力してるよ。誰が見ても、それが笑顔って言ってもらえるようになりたいよ。 「私だって、笑ってるつもりなのになぁ」 「……まぁ、長く一緒に居たら分かるけどね」 「精一もそう言ってた」 私がため息をつけば、友達が苦笑いをする。 どうすればいいかなぁ、と思考を巡らせるが答えには一向にたどり着けない。 「あ、幸村くんだ」 「嘘?!」 クラスが違うはずの精一が何故か教室の入り口にいて、キョロキョロと探している。 今日はきっと精一も忙しいだろうから、あたしが会いに行くまでは大丈夫だと思ってたのに。 「あ、手招きしてるよ」 「……ちょっと、私どうすればいいの?!」 「あれだよ、あれ。当たって砕けろ、ってやつ」 いや、砕けちゃダメだろ。と心の中で友達に突っ込みをいれ、席を立つ。 あんまり長いこと精一を待たせると、後が怖いから。しぶしぶ、プレゼントを持って精一の元へと向かう。 「精一杯、笑うんだよー」と後ろから声が聞こえたけど、それどころではなかった。 教室を出れば、人気の少ない階段の踊り場まで連れていかれる。 私としても、大勢の前でプレゼントを渡す勇気も度胸もないから、……よかった。 「精一、これ」 精一もきっと2人っきりになれば私が行動を起こすとふんでいたんだと思う。 まぁ、実際にそうだから、精一って私のことよく分かってるなぁって。 「ありがとう」 嬉しそうに微笑む精一。私もこれくらい自然に笑えたらなぁなんて考えながら、精一の目を見る。 「た、誕生日、おめでとう!!」 友達とたくさん練習した成果。精一杯、笑う。 「!!」 精一が固まって、私を見たまま動かなくなった。 私の中に生まれた不安。 やっぱ、あれか。 私の笑顔は不気味に見えてしまうんだろう。 悲しくなって目を反らそうとすれば、精一の頬がどんどん赤く染まっていった。 「……ねぇ、」 耐えきれなくなった私が声をかければ、精一はさっきの微笑みとは比べものにならないくらい綺麗に笑っていた。 「最高のプレゼントだね」 その表情に私の胸は高鳴り、つられて顔に熱が集中する。 どうやら、私の気持ちは精一に届いたらしい。 その笑顔は反則だから (いつもクールな彼女が見せた) (あの笑顔を見て) (赤面せずにはいられない) |