短編。 | ナノ
君なるは狂気の沙汰なる哉



いつからだろうか?
知らず知らずのうちに、彼女を目で追うようになったのは。

授業中も、すれ違うときも、気づけば俺の視線は彼女に奪われている。
彼女が笑うと俺も嬉しくなって、彼女が悲しそうな顔をしていると、俺まで泣きそうになる。

自分で処理できない感情に息苦しくなって、俺は病気なのだろうかと水色に聞いたら、「一護にも春到来だよ」なんて訳のわからないことを言われてしまった。

後から冷静に考えれば、その意味は疎い俺にでも理解できて。
これが"恋"というやつなのか、と妙にしっくりきた。

"恋"だの"愛"だの、俺には無縁だと思われていたものが、実はとっくに俺の中に存在していて驚いたけれど、そういう複雑なコトは考えないようにして。
ただ彼女の傍で支えてやりたい、護ってやりたいというそんな思いが、より一層大きくなった。


そうやって必然的に生まれる感情の裏に、これもまた必然的にくっついてきたもの。
他の男に向けられる笑顔に、きゅうっと胸が苦しくなるような感情。

そういうのを見るたびに、俺の中がぐちゃぐちゃになるような、何とも言えないぐるぐるしたもんが広がって。
その笑顔を俺にだけ向けてほしいなんて、傲慢な考えなのかもしれないけれど、どうしても望んでしまうのだ。

それならばさっさと告ってしまえば?とか気軽に言われたりもするけれど、そんな簡単にできるほど、俺の恋愛偏差値は高いものじゃない。
というより、想いが強すぎて、彼女を目の前にしただけで、俺が俺でなくなっちまいそうな気がするから。


結局のところ、彼女が俺を見てても、他の奴を見てても、俺の中にあるのは彼女のことばっかりだって気づいて、何だか笑えてきた。
頭ん中も、心ん中も、全部が彼女のことでいっぱいで。

抑えが効かなくなりそうなくらいの想いに、全身がオカシクなってしまいそうだ。



『一護くん!今日日直一緒だね!頑張ろうね!』

「あぁ、よろしくな、鵺雲」



ほら、また。

そうやって笑いかけられた俺の心臓が、お前に侵されていくんだ。












end.


恋に目覚める瞬間。
いつの間にか目で追って、いつの間にか嫉妬を覚える。

誰にでもある瞬間を書き連ねてみました。


ここまで読んでくださった鵺雲様、ありがとうございました!


Title/箱庭様 お題51-100/96より
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