短編。 | ナノ
where is?






家を飛び出し、辺りを見回す。

霊圧を探るが、やはり消しているのか、それとも弱まっているせいなのか見つけられない。



「ちくしょー…どこに行きやがった…!」



とりあえず一発殴るでもしねーと気が済まない。
一刻も早くこの怒りをぶつけてやりてぇ。

あいつが逃げ込む場所は限られているから、片っ端から潰してみるか。



「俺から逃げられると思うなよ…ルキアぁぁあ…!」






なんでこんなことになっているのかというと。

始まりは昨日のことだ。
最近俺が忙しそうにしているのをみた鵺雲が、
『疲れてるときには甘いものがいいんだよ』
とわざわざチョコを作って学校に持ってきてくれた。

しかも丁寧にラッピングされ、プチバレンタインみたいな感じで。

実際最近忙しくて、鵺雲のことをあまり構ってやれてなかった。
なのに文句一つ言わずに、むしろ俺を心配してくれてて。

すげぇ嬉しくて、ついその場で抱き締めちまって…。

そしたらまわりの奴らに『見せつけんな』だの『あの黒崎が…』だのいろいろ言われた。
中でも特に啓吾のヤローがうるさかったから、とりあえず蹴りを入れといた。


んで、家に持って帰って、溶けないように冷蔵庫に入れて…。

次の日、つまり今日。
食べようと冷蔵庫を開けたら。



…ない。



大事にとっといた、鵺雲が俺の為に作ってくれたチョコが跡形もなく消えている。

誰が食ったのかと親父たちに聞いてみるが、誰一人として食べてないらしい。
親父に至っては『食っときゃよかった』などと泣いていた。



…じゃあ誰だ?
俺の楽しみを奪ったのは。



…あ。
一人、いるじゃねぇか。

急いで部屋に戻り、壊れるんじゃないかという勢いで押入を開ける。



「!!!!」



そこに彼女の姿はなく、代わりにラッピングのリボンが隠されるように在った。


頭の中で、なんかが爆発した。

…ような気がした。








そして現在なわけだが。

どこから探すべきか…。
ゲタ帽子(名前は忘れた)のとこか?

とりあえず手がかりもないし、行ってみるしかねーな。


店の前に立ち、叫んでみる。



「おーい。…ゲタ帽子!」



しばらくして、カランコロンと足音を立てて、ゲタ帽子がひょいっと顔を出した。



「なんスか〜、黒崎サン。そんな大声で呼んだら恥ずかしいじゃないっスか」



ふぁぁ、とあくびをしてだるそうな顔をしている。

が、そんなことは関係ない。



「ルキア来てねぇか?」

「朽木サン?…いや、うちには来てないっスねぇ…。なんかあったんスか?」

「いや、来てないならいいんだ」


ここじゃなかったか…。

礼もそこそこに、ゲタ帽子のとこをあとにしようとした時。



「あ、お待ちくだされ黒崎殿。そういえば見かけたような気がしますぞ」

「ホントか!!!?」



ゲタ帽子の仲間の…誰だっけ。
そいつによると、30分ほど前に店の前を通ったらしい。
真剣な顔をして走っていたから話しかけなかったそうだ。

走っていった方向にあるルキアに関係あるものは…。

頭をフル回転させて考える。



「…鵺雲んとこか?」



まさかとは思ったが、思い当たるのはそれしかない。

気合いを入れ直し、鵺雲の家に走った。








インターホンを鳴らす。

すると、間もなくドアがあけられて。



『はーい……あれ、一護?どしたの?』

「悪いな、いきなり来たりして」


鵺雲は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を見せてくれた。

いつもこの笑顔に癒される。


…って、和んでる場合じゃねぇ。


「あのよ、ルキアのやつが来てたりしないか?」

『……え?』



なんだ、今の微妙な間は。

鵺雲の後ろを何気なく見ると、なんか見たことある靴が隅の方に見えた。



「鵺雲?」

『な、なぁに?』



お互いににこーっと笑う。

俺はぎゅっと鵺雲を抱き締めると。
そのままよいしょ、と扉の前から移動させた。



『え!!?』

「悪いな、これも全部鵺雲の為だから」



部屋の中に入る。
見回してみるが、ルキアはいない。
窓が開いていないことから、まだこの部屋にいるのは確かだ。


…ん?
クローゼットの扉からなんかはみ出てる。

じーっと見ていると、少しずつだが中に引き込まれていった。


…そこか。

鵺雲があぁ〜…と顔をしかめて見ているが、仕方ねぇ。




「見つけたぞコラァ!!!!!」

「ひゃあ!!!!!!」



勢い良く扉を開けると、そこには小さく隙間に埋まったルキアがいた。

俺の尋常じゃない様子を見てか、鵺雲が間に入る。



『一護、ちょっと落ち着いて…』



が。
残念ながら、俺の勢いは止められず。



「よくも俺が大事にとっといたチョコレート、食ってくれたなぁ?」



その言葉に、鵺雲は俺を見つめる。

鵺雲の後ろに隠れていたルキアがこそっと顔を出して。



「しっ…知らなかったのだ、まさか貴様が楠からもらっていたものだなんて」

「俺がどんだけ楽しみにしてたと思ってんだ!鵺雲がせっかく…」



そこまで言ったところで、服の裾がひっぱられた。


見ると、鵺雲が少し悲しそうな顔で俺を見ていた。



「鵺雲」

『一護、朽木さんのこと怒らないで。わざわざ、謝りにきてくれてたんだから』



衝撃の事実だ。

謝りに来てた?鵺雲に?
どういうことなのか、2人に聞いてみる。



「食べたあとに昨日楠が貴様に何か渡していたことを思い出したのだ」

『それでね、一護に作ったのに自分が食べちゃったから申し訳ないって言って来てくれたの』



ちなみに、隠れていたのはあとで一緒に俺のとこに来るつもりでいたが、先に俺が来てしまったために気まずくなったそうだ。



…なんか、拍子抜けだ。

怒りが完全に収まったわけではないが…鵺雲が私に免じて、と言うのであれば仕方ない。



「なんだよ、なんか俺だけが悪者みてーじゃねぇか」

「…すまぬ」



…でも、食べられてしまったチョコレートが戻ってくるわけではない。

小さくため息を吐く。

すると、俺を下から見上げていた鵺雲が覗き込むようにして目線を合わせてきた。
突然目が合ったことに、顔が紅くなってしまう。



『また作って持ってくから。一護の疲れが一気に吹っ飛んじゃうくらいの。…おいしいかどうかは別として』



にこっと笑う。

そして。



『それから…ありがとね。嬉しかった』




…やばい。
上目遣いでそれは反則だろ。

ついまた反射的に鵺雲を俺の腕の中に収め、「可愛すぎ」と言ってやった。

そんで、そのままゆっくり顔を近づけ………




あ。




「…なんだ。キッスはしないのか??私に構わず続けてくれ」




しまった。
ルキアがいたのを忘れてた。

慌てて離れる。

鵺雲は顔を真っ赤にしてうつむいていた。
…それもかわいいとか思ってしまった不謹慎すぎる俺。

とりあえずしっっっかり口止めをして、鵺雲に迷惑だからと帰ることにした。

帰り際に「続きはまた今度な」と頭を撫でてやると、照れ隠しなのか肩を殴られた。



…ま、次を楽しみにしてろってことかな。

いろんな意味で。







end.




キャラがおかしくて申し訳ないです…!!

溺愛してるんです。形はどうあれ。


頑張れ一護!!(ぇ)

ちなみに、口止めが功を奏したかどうかはご想像にお任せします(笑)



ここまで読んでくださった鵺雲様、ありがとうございましたm(__)m
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -