彷徨う腕の、行き先。
楠鵺雲。
俺の幼なじみであり、俺の大事な、想い人。
いつから好きだったのかは、覚えていない。
気付いたときには、幼なじみから一人の女として意識するようになってた。
俺たちは、いつも一緒にいた。
俺と鵺雲は、小さい頃からよく遊んでいた。
喧嘩しても、次の日には仲直りをし。
誰かに意地悪されていると聞けば、すぐ駆け付けたりもしていた。
あと、親が知り合い同士だったこともあって、お互いの家を行き来することも頻繁だった。
それは高校に入ってからも変わらなくて、部屋に泊まることもあって。
別に何かするわけでもなく、一緒の布団で、寝る。
そのたび鵺雲は、『なんか変な感じだね』と笑った。
俺は正直理性を保てるかぎりぎりだったけど。
でも、鵺雲が幸せそうに笑うもんだから。
俺も「そうだな」と笑い返して、鵺雲の頭の下に腕を入れ、眠りに就く。
いつも一緒にいる。
俺の隣で、鵺雲が笑ってくれる。
ずっと、続くと思ってた。
けれど。
それは、突然だった。
『一護、私好きな人ができたの』
いつもの、俺の大好きな笑顔で、大好きな声で、俺以外の男への想いを告げた。
一瞬だけど、目の前が真っ白になった気がした。
聞こえた言葉を頭の中で噛み砕こうとしても、思うように処理できない。
「そ、か」
かけてやる言葉が何もなくて、でも、俺の行き場のない想いは溢れ出て。
気付けば、鵺雲を引き寄せていた。
困ったような声で、鵺雲は俺の名前を呼んで。
『一護、苦しいよ』
それでも、腕を解くことはできなかった。
離してしまえば、今すぐにでもお前が遠くに行ってしまいそうな気がしたから。
鵺雲を抱き締める腕に力が入る。
それに反するように、消え入りそうな声で、俺は。
「好きだ」
今更だけど。
もう、手遅れなのにな。
『一護』
鵺雲を見れば、悲しそうな顔で、でも優しく微笑んでいた。
そして、俺の頬に手を添えて。
『ありがと』
一言だけ、そう言った。
もっと早く、伝えていたのなら。
「行くな、」と言えていたら。
俺は今も変わらず、鵺雲の隣にいられたか?
お前は、俺の隣で笑っていてくれたか?
…なぁ。
俺、今でも胸が苦しくてしょうがねぇんだ。
鵺雲。
俺のこの気持ちはどこにやったらいい?
end.
初めて切夢に挑戦してみましたが…いかがでしたでしょうか。
なんていうか収拾がついてなくてごめんなさい(´д`;
たまには、と思って書いてみたのですが。
やっぱり一護には幸せであってほしいですね。
よろしければ感想等お待ちしております(*^□^*)
ここまで読んで下さった鵺雲様、ありがとうございました!