短編。 | ナノ
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…なんだよ。
鵺雲のやつ、やけに石田と仲良さそうに話してんな…。

…何話してんだ?

あまり見ない組み合わせに、まったく会話の想像がつかない。

でも、鵺雲が楽しそうなのは事実で。
石田に、笑顔を向けている。

ていうか、石田もあからさまに嬉しそうにしてんじゃねぇよ。
俺に対する嫌味かなんなのか。



気にくわねぇ。



俺の視線に気づいたのか、鵺雲がこっちを見て微笑んだけど。
なんか、気持ちに表情がついていかない。
笑い返してやりたいのに、うまく笑えない。

気まずくなって視線をそらした。
その瞬間、視界の隅に鵺雲の悲しそうな表情が入った気がした。




こんなこと、初めてで。
…どうすりゃいいんだよ…。






自分の中の感情をどう処理したらいいのかわからないまま、次の授業を迎える。
…案の定、授業の内容はまったく頭に入ってこなかった。








「ちょっと来い」

『え、次移動教室…』



その授業が終わるとすぐ、否応なしに鵺雲の手を引いて教室を出る。



「たつき、俺と鵺雲次休む。よろしく」



去り際にそれだけ伝えると、たつきの「今度なんかおごってよ」って声が後ろから聞こえた。







屋上に出る。
鵺雲の手を放して、俺は屋上の柵に手をかけた。


…連れてきたはいいものの、何を話したらいいんだ?

聞きたいことは、たくさんあるのに。


石田と何話してた?

なんで、あんなに楽しそうだったんだ?

石田のこと、どう思ってるんだ…?

もやもやした気持ちだけが大きくなって、喉の奥がつまりそうで。

まともに鵺雲の顔も見れず、時間だけが過ぎようとしていたとき。



『一護?私、何かした…?』



鵺雲は俺のシャツの裾をつかんで、悲しそうな顔をしていた。



『何かしたなら謝るから…そんな冷たい顔しないで』




…なんで鵺雲がそんな顔してんだよ。

そんな顔を見てられなくて、鵺雲が泣きそうなのが苦しくて。
気づいたら俺は話し始めていた。



「……嫌だったんだよ」

『…え?』

「鵺雲が、石田と話してんのが嫌だった。なんか、よくわかんねぇけど…見ててイライラする」




やっとの思いで口に出してみたが…鵺雲から何も反応がない。

なんだこの間は…。
不思議に思って見てみたら、鵺雲は目を丸くして俺を見つめてた。

そしてどこか嬉しそうな表情を浮かべる。

…意味が、わからない。



なんで笑ってんだ?

俺の気持ちは、伝わってないのか?



「…なんだよ」

『妬いてくれたの?』



的確すぎる言葉に、心臓が大きく音を立てたのがわかった。


顔が赤くなるのがわかる。



…そうか。
俺、妬いてたのか。


どこかはっきりしなかった自分の気持ちにやっと答えが出る。

あーあ…情けねえな、俺。



『ありがとう、一護。嬉しい』



思ってみなかった言葉に、今度は逆に驚かされる。
てっきり、『女々しい』だの『そういうの嫌い』とか言われるかと思ったが。



『石田くんには、裁縫のこと聞いてただけ。それがちょっと盛り上がっちゃったの』



裁縫?…あぁ、あいつ手芸部だったもんな。
…そういえば、なんか糸かなんか机に出してた気もする。



『私が好きなのは、一護だけだよ』



俺の頬に、鵺雲の唇が触れる。
頬を押さえると、くすくすと笑う鵺雲と目が合った。



「…ばーか」



照れているのを見られたくなくて、ぐしゃぐしゃっと頭を撫でてやり、屋上に寝転がった。

俺の横に鵺雲もごろんと寝転がる。



「…鵺雲」

『うん?』

「俺が好きなのも、鵺雲だけだからな」



…その証を残すように、鵺雲の首に1つ、赤い痕をつけた。

もちろん、俺以外の男が近づかないように、という意味もしっかり込めて。

『見えちゃうじゃん』と怒られたけど、お前が悪い。


改めて、気づかされたけど。

鵺雲が、好きすぎて。

こんなんじゃまだまだ足りねぇ。


…責任とってもらうからな。

覚悟しとけよ?










end.




何が書きたかったのかorz

嫉妬する一護が書きたかっただけなのですが…独占欲むき出しになってしまいました。


照れた一護が好きです。



ここまで読んでくださった鵺雲様、ありがとうございました!
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