水+君=?
久しぶりの休みの日。
一護とやっっっっと予定が合って、私はるんるんと一護の家にやってきていた。
一護のお父さんや夏梨ちゃん、遊子ちゃんに挨拶し、一護の部屋に入る。
あー…やっぱりなんか落ち着く。
ぐるっと部屋を見渡した。
すると私のすぐ後から飲み物を持って一護が入ってきた。
座るように言って、1冊の本を持ってくる。
「鵺雲、これ、前から読みたいって言ってたろ。読む?」
『あ、うん!ありがとう』
…
……
………それから、時間がだいぶ経ったんだけど。
ベッドにごろんと寝転がって本を読んでる一護。
一方で私はさっきの本も読み終わってしまい。
新しく雑誌を読んでいる。
…なんか、違う。
こういうのもいいのかもしんないけど…。
でもせっかく会えたんだし、どこかに出かけたいなー…。
思い切って聞いてみる。
「一護。どっか行きませんかー」
『ん?どっか行きたいとこでもあんのか?』
本を胸の上に置いて、私の方に上半身を向ける。
『どこって言われると…特にないんだけど…。今ちょうど桜咲いてるし、散歩がてらお花見したいなーとか思ったり思わなかったり…』
ぼそぼそと言ってみると、一護がわしっと私の頭をつかむ。
自然と一護と見つめ合う形になった。
私が何も言えずにいると、
「行きたいの?」
とじっと見つめられた。
こくこくと頷く。
「そうか、気づかなくてごめんな。よし、じゃあ行くかー」
そう言ってにっと微笑んだ。
勢い良く立ち上がると、上着を着て扉に手をかける。
「行かねーのか?」
『あ、行く!行きます!』
私も一護に急かされるように上着を着て、彼の部屋をあとにした。
『わぁ、満開だー!』
「思った以上に咲いてんなー。
てか人多っ!」
近くの公園に来ると、桜を見に来た人で賑わっていた。
出店も出ていて、ちょっとしたお祭りみたいで。
桜を見上げながら、公園の中に入っていく。
「おーい、あんまり上ばっかり見てると転ぶぞ」
『あ、ごめん。つい興奮しちゃって』
一護は呆れたように笑って、「転びそうだから」と私の手を握った。
なんか嬉しくて、私もぎゅっと握り返した。
桜並木の中を2人で歩いていくと、ちょっと先に噴水が見えてきた。
『あれ?この公園に噴水なんてあったんだね』
「俺も初めて見たな。なかなかこんなところまで来ることなかったからなぁ」
近くまで行ってみると、結構な大きさであることがわかる。
周りには人工的に作られた池があり、その真ん中に噴水があった。
近くには座れるようなベンチや芝生もあって、子どもたちが遊んでいた。
『わ、一護、見て見て!なんか泳げそうなくらい大きいよ!』
「じゃあ鵺雲泳いでくるか?ま、俺は見てるけど」
…ものの例えなのに。
なんか悔しかったから、ぐっと靴を踏んでやった。
「痛ッ!!なんだよ、踏むことねぇだろ」
『一護が意地悪言うからでしょ』
ぶつぶつ言いながらも座れそうな場所を探していると。
子どもたちがビニールのボールを投げ合って遊んでいる姿が目に入る。
そのボールが、ぽーんと噴水の方に向かって飛んでいき、ぽちゃんと中に入っていった。
私は無意識のうちにその様子を目で追っていて。
4歳くらいの小さな子が、それを追いかけていくのが見えた。
私は立ち止まって一護の手を引く。
『ねぇ、一護』
「どうした?」
『あの子…噴水の中に、入ったりしないよね』
もう一度噴水の方に目をやると、先程の子が周りの石垣に登って、水面に漂うボールに手を伸ばしていた。
気づいた一護が走りだして。
小さな子がバランスを崩す。
「危ない!!!!!!!」
次の瞬間。
ばしゃああああん!!!!
大きな水の音としぶきがあがった。
『一護!!!大丈夫!!!?』
私もあわてて駆け寄ると。
一護は子どもを抱きかかえ、びしょ濡れになっていた。
小さな子は一護にしがみつき、えぐえぐと泣いている。
一方で一護は、よしよし、とその子の頭を撫で、優しい笑みを浮かべていた。
「どっか痛いところはないか?」
「だいじょうぶ〜…」
すると、その子の母親が飛んできて、子どもを抱き上げる。
一護にむかって何度も何度も頭を下げ、「ごめんなさい」と繰り返していた。
石垣をまたいで、ぽたぽたと雫をたらしながら私の方へ戻ってくる。
私が気づいたんだから、私が行けばよかった。
私のせいで、もし風邪をひいたりしたら。
そんな後悔と罪悪感が私の中を駆け巡っていた。
「ふぅ。ちょっと泳ぐには早かったなー」
『ごめんね、私が気づいたなら行けばよかったのに…。私のせいで…』
申し訳程度にハンドタオルを差し出すと、それをひょいっと受け取って顔とか腕を拭き始める。
「なんで鵺雲が謝ってんだよ」
『だって私が気づいたから一護が…』
うつむく私の頭をグーでぐりぐりする。
痛っ、と思って顔をあげると、呆れた顔の一護がいた。
「お前なー、そこは謝るとこじゃねぇだろ。鵺雲が気づいたおかげで、あの子は怪我しなくてすんだんだぞ?
むしろ『一護ありがとー』ぐらいに思っとけばいいんだよ」
びしっと指をつきつけられ、つい頷いてしまう。
でも、私の中の罪悪感は消えなくて。
「とりあえず着替えねぇと…。家、帰るか」
何となく気まずいまま、私たちは公園をあとにした。
そのあとすぐ、一護の家に戻ってきていた私たち。
遊子ちゃんに事情を説明して、すぐお風呂を入れてもらう。
一護は面倒くさそうに私の横でため息をついて、タオルを頭にのっけている。
「別にふいときゃ大丈『ダメ!!!!!!絶対冷えてるから暖まってきて!!!!!!!!』
「……はい」
お風呂場に向かうのを見送る。
自分でもびっくりするくらいの大声が出たが、そんなことはどうでもよくて。
何よりも一護が心配だった。
家族のみんなはそんなに心配しなくていいって言ってくれたけど…。
やさしさが逆にプレッシャーになってしまう。
複雑な思いで、私は一護が出てくるのを待った。
しばらくして、階段を上ってくる音が聞こえる。
はっとして扉を見ていると、がちゃっと扉が開いた。
『おかえ……えぇ!!!!?』
そこに立っていたのは、なぜか上半身裸の一護。
『なんで上着てないの!!!?』
「着替え持ってくの忘れちまったんだよ」
がしがしとタオルで頭を拭きながら平然と部屋に入ってくる。
私は直視できずに後ろを向いて、一護がちゃんと着替えるのを待っていた。
のだけれど。
「鵺雲」
名前を呼ばれて振り返った瞬間、ふわっと入浴剤の香りがした。
そして目の前には一護の胸板があって。
私はすっぽりと腕の中に収められていた。
『な、な、な、何!?』
「いや、なんか心配かけたから」
離れようともがいても、当然離してくれるわけもなく。
むしろ力を込められている気がする。
『もう、一護!いつまでもそんなかっこでいたら風邪引いちゃうよ?』
背中に回した手でぺちぺちと叩いてみるが、「んー」て言うだけで効果なし。
どうにか体を離して見上げると、どこか楽しんでいるような表情をしてる。
『せっかく暖まったのに意味ないじゃん…。もう一回着替え持って行ってきたら?』
その言葉を待ってたかのように、口の端をにっとあげて笑う。
「じゃあ、鵺雲が暖めてくれたらいいんじゃね?」
『…え?』
「だから、暖まってほしいんだろ?」
次の瞬間には、私の目線が一護と同じ高さになっていて。
ぽいっとベッドに投げられた。
はっと一護を見ると、完全に悪人の顔をしてる。
『いや!無理!』
「じゃあ一緒に風呂入るか?」
『もっといや!!』
一護が、ベッドに足をかけ。
スプリングが一段と大きい音を立てた。
end.
この後の展開は、御想像のままに。
一護が変態で申し訳ないです。。
ここまで読んでくださった鵺雲様、ありがとうございましたm(__)m