金曜日の夜。
エースの左手には缶ビール。
俺の前のテーブルの上にはポテトチップス。
テレビからは芸人の声と、観客の笑い声。
ボリボリ。
そういえば、小さい頃ポテトチップスを食べ終わった後のエースの指に噛み付いていつも怒られてたのを思い出した。
最後のこの指が堪らなくうめぇから仕方ないんだ!
「エース」
「ん〜?」
多分、少し酔ってる。
間延びした返事のエースに人差し指を突き出す。
「…? 何だ?」
「おれ、今思い出したんだ!小せぇ頃、エースとポテトチップス食べた後にいっつもエースの指舐めて怒られてただろ!だから今日は譲ってやる!」
ぽかんと間抜けな顔のエースに更に人差し指を近づける。
本当は俺が舐めたいの我慢してるんだからな。早くしろ!
「別に今はどうでもいいけど…。まあ…、じゃあ、いただきます」
珍しいこともあるなーなんて言いながら、かぷり、と噛みつかれた人差し指。
エースの口の中は、お酒のせいで熱い。
吸い付く様に指を吸われて、更に熱を持っている舌で指先を舐められる。
ざらりとした舌の感触に心臓がどくん、と波打って身体が熱くなる。
…きっと、エースの熱が伝染して熱くなったんだ。
うん。そうだと言うことにしておこう。
最後に指先を強く吸われて、唇が離れる瞬間に、うっ、と声が漏れた。
「何?コーフンしてんの?」
ニヤリと口を上げて笑うエース。
こんにゃろう。
ぜってーわかって言ってるだろ!
「…エースの変態」
「それはどうも」
褒め言葉だな!なんて言いながら笑うエース。
この熱、どうしてくれんだ!
「てゆうか、お前も変態だろ。指舐められただけで興奮してんだから」
ケラケラ笑いながら缶ビールに口付けているエースは、このままだと何もしない気らしい。
エース、変態な上にSだ。
…知ってたけど。
「エース」
「ん?」
「…味見だけで満足か?」
残り少なくなっていたビールを飲み干してエースがこちらを向く。
満足そうに笑うエース。
やっぱり変態だ!
「そんなに喰って欲しいなら、お望み通り喰ってやるよ」
そう言って首筋に噛みついてきたエースに、今日は本気で喰われる覚悟した。
2012.07.01
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