「あ」
「げ」
たまたま、本当にたまたま通りかかった街中で、右腕に女の人を連れているエースと遭遇した。
その状況に焦っているエースとは対照的に、右腕に必要以上に絡みついている女性が誰ぇ〜?と甘ったるい声を挙げている。
「・・・お、弟」
パチーン!
街中で清々しい音が鳴り響いた。
*
「本当に申し訳ございませんでした」
ソファに座るおれの足元で華麗な土下座を披露しているエース。
こんなことで怒りが治まる訳がない。
「結局、エースはおれのこと弟としか思ってねぇんだ」
「違う!おれはお前を愛してる!兄弟としてじゃなくて!」
そんなこと言われたって、あんな状況に遭遇していて信じられるはずがない。
その前に、何回目の浮気だ。
「ほら、たまにさ。なんつーか、他の物が食べたくなるみたいな?よく言わね?ルフィもずっと肉食ってたらさ、魚食いたくなるだろ?」
「おれはそんなのならない」
「ですよねー!」
へらっと笑ったエースをじろりと睨むと、いや、すみません、もうしません。そんな言葉を言いながらまた頭を下げた。
その言葉を聞くのも何度目だ。
「ほんと、ごめん」
小さく呟き、こちらの様子を窺うように少し顔を上げたエースがゆっくりと立ち上がる。
そしておれの隣に座り、ぎゅっと抱きしめられる。
「・・・・・・エースの馬鹿野郎」
「うん、ごめん」
耳元で愛してる、と囁かれ、おれもエースの首に腕を回す。
きっと、こうされれば許してしまう事をエースは知ってる。
馬鹿野郎はどっちだ。
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浮気性エース。
「独り占めしたいの」の元ネタ作品
2012.10.12
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