「あ」

「げ」


たまたま、本当にたまたま通りかかった街中で、右腕に女の人を連れているエースと遭遇した。
その状況に焦っているエースとは対照的に、右腕に必要以上に絡みついている女性が誰ぇ〜?と甘ったるい声を挙げている。


「・・・お、弟」


パチーン!


街中で清々しい音が鳴り響いた。









「本当に申し訳ございませんでした」


ソファに座るおれの足元で華麗な土下座を披露しているエース。
こんなことで怒りが治まる訳がない。


「結局、エースはおれのこと弟としか思ってねぇんだ」

「違う!おれはお前を愛してる!兄弟としてじゃなくて!」


そんなこと言われたって、あんな状況に遭遇していて信じられるはずがない。

その前に、何回目の浮気だ。


「ほら、たまにさ。なんつーか、他の物が食べたくなるみたいな?よく言わね?ルフィもずっと肉食ってたらさ、魚食いたくなるだろ?」

「おれはそんなのならない」

「ですよねー!」


へらっと笑ったエースをじろりと睨むと、いや、すみません、もうしません。そんな言葉を言いながらまた頭を下げた。

その言葉を聞くのも何度目だ。


「ほんと、ごめん」


小さく呟き、こちらの様子を窺うように少し顔を上げたエースがゆっくりと立ち上がる。
そしておれの隣に座り、ぎゅっと抱きしめられる。


「・・・・・・エースの馬鹿野郎」

「うん、ごめん」


耳元で愛してる、と囁かれ、おれもエースの首に腕を回す。
きっと、こうされれば許してしまう事をエースは知ってる。




馬鹿野郎はどっちだ。



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浮気性エース。
「独り占めしたいの」の元ネタ作品



2012.10.12



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