「彼女出来た」
エースが不意に言った。
「ふーん」
一言そう言って、この話は終わった。
だって、本当にそうとしか思わなかったし、ゲームに夢中だったから。
てゆうか、エースに彼女が出来るのは初めてじゃない。
結構、取っ替え引っ替えしてる方だと思う。
本気にならないなら、彼女なんて立場にしなければいいのに。
その時はそうとしか思わなかった。
そして、その数日後。
エースが彼女を家に連れてきた。
今まで家に彼女を連れて来たことはなかったので、さすがにこれにはびっくりした。
茶髪でふわふわとした髪の毛の、目がぐりっとした女の子。
エース、とうとう本気になった彼女が出来たのか。
*
何時間かして部屋から出てきた彼女は、お邪魔しました、と言って帰っていった。
家を出る時、真っ赤な顔で恥ずかしそうにエースを見ていたので、ああ、エースに散々やられたんだろうな、と思った。
おれの隣の部屋で。
いつもはおれが居るはずの、エースの部屋、で。
ふつふつと何かが煮えるような感覚がする。
そう感じていると、座っていたソファの横にエースが腰を掛けた。
お互い一言も言葉を発せず、暫く沈黙が続いた後、なあ、とエースが口を開いた。
「あいつ可愛いだろ。カラダの相性も結構よかったし、お前の事もういらないかも」
ソファの背の部分に両腕を伸ばし、足を組んでいるエースが無表情で言った。
この態度、気にくわない。
頭の中で何かが煮えている音が大きくなり、咄嗟にエースの組んでいる足の上に跨がる。
それにより目線が高くなったおれをエースが見上げる。
「…なあ、あのカノジョ、エースのこと全部満足させてくれんのか?」
胸ぐらを掴み、ぐっと顔近づけてエースを睨む。
未だ全く表情を変えないエースの目は、血が通っていないようで冷たい。
「おれが一番エースを知ってる。キモチヨクしてやれる」
睨むおれを暫く見つめた後、ニヤリと口角を上げてたエース。
やはりその目は笑っていなかった。
「じゃあ、おれが彼女の事どーでもよくなるくらい、キモチヨクしてくれな」
冷たい目とは反対に、甘く囁かれる。
当たり前だ。
他のヤツなんかに渡してたまるか。
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独占欲の強いルフィと、それを分かっててわざと仕掛けるエース。
2012.08.06
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