6.「栞紐」【お題:前日】
田舎から上京してきた大学生と、その田舎の図書館に勤める司書のおはなし。
冬休み、地元に戻った大学生は東京の喧噪に慣れてしまって、18年間も過ごしてきた田舎がどうにも、いも臭く感じていた。あまりに田舎のため娯楽施設もほとんど無い。地元の友人とも付き合いたくない。そんななか、暇潰しへと訪れた図書館で須堂という司書に出逢う。図書館の利用客は年寄りと子どもばかり。30代半ばの須堂はわりと歳の近い大学生に親しみを覚え、自分から声をかけてゆく。大学生は、最初こそ鬱陶しいと思っていたものの、須堂の素直さや読書への熱意に心揺るがされてゆく。そして、須堂オススメのとある1冊の本を借りる。なにが面白いだとか心惹かれるだとかは大学生には判らなかったが、須堂のことを考えるとすらすら読めた。読書に没頭する日々を過ごし、あっという間に年が明けて冬休みが終わりになる。もう東京のアパートへ戻らなければならない。大学生が東京へ戻るその日、返却期限が昨日だったことに気がつく。だが読了していたため、本を返しに図書館へ行った‥‥須堂に会いに行ったというほうが正しいかもしれない。しかし、須堂はおらず、その図書館にいた誰に訊ねても須堂という男は存在しないと言われた。困り果てる大学生。迫る電車の時間。大学生はその本を返すことなく、東京へ戻ってしまう。新学期が始まり、大学の図書室をふいに訪れ、あの本と同じ本を見つける。無意識にカウンターへ持っていき貸し出しの手続きをとる。そのカウンターには知らない顔の、でも見覚えのある男がいて「次は、返却期限を守ってね」と微笑した。

っていうのが大元のお話です。
須堂さん謎。書いてて謎でした。
なんだかわけが判らない変な人を書くのがどうも好きみたいで。

タイトルを決めるのが苦手なことで有名な野永でございますが、作中に「栞紐」という言葉が出てくるので字面と語感でタイトルにと選びました。

この言葉を見つけたのはたまたまで、単行本に付いてるあのちょっとつやつやした紐の名称ってなんて言うんやろ普通にしおりでいいんかな、と調べたのがキッカケ。

ちなみにこの大学生、ちゃんと神田という名前があります。
本といえば神田。神保町。そんな感じです。



ということで2013年の創作の総括(早口言葉みたい)。
あまり長編は書けなかった気がします。
プライベートで大きな事案を抱えていてそれに4ヶ月ほど費やしたので創作に長時間とりかかれなかったのが正直なところであり言い訳っぽくもあり。
ですが現在はその事案、無事に解決いたしましたので2014年からはのびのびと創作できるかと思います。短編ばかり書いていたので次こそ長編にチャレンジ。

このKrimsKramsに加わったことで毎月2本はなにかしら小説を書かなければならないとなり、いろいろ追い込まれながらも創作をすることができたかと思います。
同じお題で三者三様、とても面白いです。刺激になっております。

KrimsKrams以外での創作といいますと、とあるお友達のリクエストでとあるジャンルの小説をがっつり書いたことが印象に残っております。
そのジャンルの小説は読むばかりでいましたが、自分でも書きたくなってくるというのが物書きの性。そこへお友達の言葉がありました、創作に決しました。
お友達のオーダーと野永の好みがないまぜになってとんでもないものができあがりました。いい想い出です。いろいろなジャンルのものが書けるなんてワンランクアップ‥‥していたらいいですねぇ(遠い目)。

長々と語ってまいりましたが、性別はどうであれ人を想う気持ち、怨めしいと思う気持ちがなにかを動かすのにはいちばん効果的なのではないか、と。

自分のために相手を想うのか、相手のために相手を想うのか。
想い方は人それぞれ。優しく包むだけが愛情では無いと思います。
そりゃ薬指を噛み千切っちゃったり人形の首を集めちゃったりもします。

そんな2013年でした。
野永的には時代物も得意としたいところなので、そちらも積極的に書いていけたらな、と思っております。長々と失礼いたしました。

2014.01.01
野永 創




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