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「お前たちは私の計画の邪魔になりそうだ……だから今ここで退場してもらう」
目の前には剣を振り被ったヴァン。隣には遊戯。自分は傷を回復してもらっても体がうまく動かせないままでいる。
アテムの脳裏には最悪の結末しか浮かんでこなかった。
(元の世界に帰れないまま……終わるのか?やっと記憶も戻って、相棒も、城之内くんたちも喜んでくれたのに……)
アテムにはすべてがゆっくり動いてるようにしか見えなかった。ヴァンが剣を振り下ろすのも、ガイやルーク、アッシュが走ってくるのも、隣にいる相棒が体を強く抱き締めてくることも。
(これで、終わり…)
──諦めてはなりません、王(ファラオ)!!
一瞬、何が起こったのかわからなかった。目の前の風景が変わったことはわかった。しかもそれは見慣れた黒紫の衣装に身を包んだ……
「マ、ハード…?」
「王よ、我が魂は貴方と共にあり……」
黒魔術師と沈黙魔術師「マハード…どうして…この世界にデュエルモンスターズは…」
「王、貴方と彼がこの世界に来たときに持っていたでしょう……精霊(カー)を宿したカードとディアディアンクを…」
(そういえば持ってきていたな…デュエルモンスターズのカードとデュエルディスク…)
マハードが現れたのはなんとなくわかったが、この世界にはソリッド・ヴィジョンシステムはない。本来なら召喚されることはないのだ。なのにアテムの目の前には信頼できるもうひとりの相棒がいた。
「……貴様、何をした」
剣を弾かれたヴァンがアテムたちを睨んでいた。仕留めそこねたこと、急に現れたマハードにイラついていた。
「私は、我が主…いえ、王を守護する魔術師。貴様こそ王に何をしようとしていた」
「私の計画を邪魔する因子を排除しようとしていた」
「……マハード、」
「大丈夫です、王よ。それよりも貴方の相棒を…」
遊戯はマハードが急に現れた衝撃で気を失っていた。マハードに言われるまで気が付かなかったが……
「大丈夫かアテム、ユウギ!?」
と、ガイたちが駆け寄ってきた。その顔は心配しているような驚いているような複雑な表情をしていた。
「オレは大丈夫だ。だが相棒が気を失っている」
「気を失っているだけなら大丈夫だ……だけど、こいつは…」
ガイは遊戯をその腕に抱いた。とりあえず怪我をしていなそうで安心したが突然現れたマハードに警戒しているようだった。
「……オレこの人、危ない人じゃないて思う。いや、絶対大丈夫だ」
「レプリカ!?」
「だって、なんだか安心できるんだ……母上と一緒にいるときのように」
ガイとアッシュは警戒していたが、ルークだけは警戒を一瞬にして解いた。理由は単純であったが、何故か説得力があるものだった。
「ルーク、ありがとう。マハードを信じてくれて。ガイ、悪いが相棒を安全な所へ…あとこの間分解したいと騒いでいた……」
「それならここにありますよぉ♪」
アテムがガイに取ってきてもらう前にいつの間にかジェイドが持ってきていた。流石に全員びっくりした。
「うわッ!いきなり後ろから現れんなよ!心臓止まるかと思ったぞ…ッ」
「すみませーん。なんか面白そうだったのでつい♪」
「旦那…今、緊急事態だぜ……?」
ジェイドの緊張感のなさにアテムたちは脱力してしまった。
「それよりもこれが必要なのでしょう?」
ジェイドの手にはデュエルモンスターズのカードとデュエルディスクがあった。初めて彼らと出会った時にガイに分解されそうになり、遊戯が死守し荷物の中にいれておいたものだった。
「ありがとな、ジェイド」
「ですが、それでどうするつもりですか?」
左腕にデュエルディスクを取り付け、デッキをセットしたアテムはジェイドの質問にこう答えた。
「……もちろん、マハードを助ける!」
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