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まだドーマが出てくることがなかったころ、学校が休みの為全員が思い思いに過ごしていた日曜日。
ロックオンやアレルヤは買い物に出かけ、ティエリアは部屋に篭りテスト勉強、遊戯と十代も海馬に呼び出され武藤家のリビングには遊星と刹那しかいなかった。遊星は何をするわけでもなくただ座っていて、一方の刹那は薄い画用紙にひたすらあるものを描いていた。

(急にいなくなって…エクシアは大丈夫だろうか)

そう、刹那は自らの愛機──ガンダムエクシアを描いていたのだ。この時代に来て随分経っていたが1日たりとも大事な愛機のことを忘れたことはなかった。

「……何、書いているんだ?」

夢中になって画用紙にペンを走らせていた刹那だったが、急に声をかけられ顔を上げた。するとさっきまで座っていた遊星が身を乗り出して画用紙を見ている姿が目に映った。

「オレの、相棒…」
「相棒か。お前の大切な存在なんだな」
「あぁ…」
「見せてもらってもいいか…?」

遊星は表情こそあまり変化はしなかったものの興味を示しうずうずしていた。刹那はそんな彼を見て彼はこんな風に興味を持つんだ、と新たな発見をし、彼なら笑うこともないだろうと思い画用紙に描いた愛機を見せたのだった。

「…細部まで描いてあるんだな」
「オレの、相棒だから。こっちに来てから忘れたことはない」
「なんて、名前なんだ?」
「……エクシア」

そうか…エクシアって言うんだな、と遊星が微笑みながら答えた。彼が微笑む、というか表情の変化があまり見られないのを最近知った刹那は思わず彼に見入ってしまった。

(笑ってたほうがいいじゃないか…)

素直にそう思った。

「刹那、お前にオレの相棒を見せるよ。こっちでは制限かかっててデュエルでは使えないからな…」

遊星がテーブルの上に置いたのは1枚のカード。刹那がいつも見ているものとは違い周りが白く塗られているものだった。そして中心には白い龍が描かれていた。

「スターダスト…ドラゴン?」
「何度もオレを助けてくれた。他にもたくさん仲間はいるけど…スターダストは特別なんだ…」

スターダスト・ドラゴンを見つめる遊星の目は愛おしい者を見つめるそれで、慈愛に満ちていた。

「……遊星、お前は笑っていたほうがいい」
「…刹那?」
「その方がお前に合っている気がする。オレは笑うことを忘れてしまった。だからオレの分まで笑ってくれ」

そう言うと刹那は席を立ちスターダスト・ドラゴンを見せてもらった礼を言いそのまま2階に上がってしまった。リビングに残された遊星はスターダスト・ドラゴンをデッキに戻すと先程の刹那の言葉の意味を考えていた。

「笑うことを忘れた、か…それは凄く寂しいことだぞ、刹那…」

そう言った遊星の脳裏には夢中でエクシアを描く刹那の姿が浮かんだ。本人は気がついていなかったが頬が緩み微笑んでいた姿が。

(笑ってたほうがいい…刹那、お前も笑えるんだ)

遊星は席から立つと双六を手伝うために店舗のほうへと歩いて行ったのだった。


「笑ってたほうがいい」

(笑うことを忘れたなんて、)
(悲しい過ぎるから言わないで)


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