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「はぁ…」

ひとり溜め息をついたのは武藤遊戯。
ただし主人格ではなく、名も無きファラオだが…

「あぁっ、もう!」
『落ち着いてよ、もうひとりのボク』
「わかってる。わかってるんだけど!」

そう、大声を発した瞬間、周りの人たちがいっせいに遊戯の方を向いた。
ちなみに、ここは学校である。

『ちょ、みんな見てるってば!!』
「ひとりで何を考えていた」
「周りから見たら、ただのおかしな奴だ」

机に突っ伏して唸る遊戯の元に、刹那・F・セイエイとティエリア・アーデが寄ってきた。

「昨日のこと、考えてた」
「……ばれたら、ただ事じゃ済まなそうだな」
「まったく、あの青眼バカをなんとか抑えられないのか?」
「無理」
「だろうな。あんのバカ社長、オレのこと凡骨言うし!!」
「城之内くん…」

いつの間にいたのか、刹那とティエリアの間には城之内克也が立っていた。

「んで、何悩んでんだー?」
「……た」
「え?もう一度言って」
「だからっ、わけわからない奴に神のカード盗られたって言ったんだ!!」

その言葉を聞いた城之内はその場で固まってしまっていた。

「そりゃマズイんじゃないか!?あの海馬が黙ってるとは思えねぇ!」
「だから参ってるんだ…」
「しかし、なんで神のカードを…」
「必要だと言っていた」
「遊戯、気になることがある」

ティエリアは眼鏡のブリッジを押して、遊戯に向き直った。

「昨晩だが、何故デュエルディスク無しでモンスターを実体化させる事が出来た?」
「それは、これの力だ」
「うげっ!あのオカルト話するのか!?」
「あぁ…城之内くんはこの話ダメだったか?」
「う…」

みるみる顔が真っ青になっていく城之内を見て、どれだけ怖いんだと心配になってきた刹那とティエリア。

「…昨日の力は闇の力。闇の力は、基本的に千年アイテムの所持者が使う事ができるんだ」
「闇の力…」
「そして、もう1つ。闇のゲームを執行できる」
「あぁぁぁぁあぁ!それ以上言うなー!!」
「うるさい」

ゴスッ

「刹那!?」
「うるさいから沈黙させた」
(……怒らせないようにしなければ)

ひそかに誓ったティエリアであった……

「(刹那、怖っ)…闇のゲームは様々。ただ、共通しているのは……




















自らの身体にとてつもない負担がかかること、敗者は罰ゲームを受ける。敗者の末路は…わからない……」

刹那とティエリアは遊戯の話を聞いて冷や汗を流した。
昨晩戦った相手は、とても恐ろしかったことに。

「……っ、何故そんな危ない力を持つ奴が、僕たちを襲った!?」
「わからない。それに、あいつの言葉が引っ掛かる」
「…神にふさわしい者」
「謎が謎を呼んで、深くなっていく…」

遊戯は額をおさえ、これからのことを考え始めた。

「……大丈夫か、城之内克也」
「う、痛たた……刹那、何すんだ……て、刹那?」

起き上がった城之内が見たものは、ぼやっと窓の外を見つめる刹那の姿だった。

「どうしたんだ、窓の外なんか見て……」
「オーロラ。オーロラが……」
「オーロラ…?んなわけって、えぇぇぇぇぇえ!?」

城之内が窓の外を見た。
その目に映ったのは、紛れもないオーロラだった。

「遊戯、ティエリア!外見てみろ!」
「外?」
「な、なんだこれは!?」
「……嫌な予感がするぜ」


.


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