そんな昼休み

「ソーマ、迎えに来たよ?」
「……ユウトか、今行く」

お昼前のいちばん辛い(空腹的な意味で)授業から解放され、オレは教科書を鞄に無造作に突っ込んだ。それと同時に隣のクラスのユウトが訪ねてきた。屋上で、いつものメンバーで固まってお昼を食べるのが常だった。

「コウタとアリサは、サクヤ先生んとこに行ったよ」
「そうか。なら、オレたちはリンドウを迎えに行くか」
「あー!ユウト、ソーマ!」

教室を出た瞬間、廊下の端からお昼を共に過ごすひとり──ユセが手を振りながら、全力疾走してきた。教師の注意もどこ吹く風だ。

「お昼、行こ?」
「その前にリンドウ先生とこ、行ってくるよ。またハブられたー、なんて言われなくないから」

そういえばそんなこともあったねー、と言っているユセを引きずりリンドウが待つ第1職員室に歩を進めた。


******


「おー、もうお昼かー」
「チャイム、なっただろう」

授業の資料を作ってたから気がつかなかった、なんて言っているがその資料というものの量がハンパなかった。次のリンドウの授業、また資料見つつ問題を解け、という形式だと想像すると背筋に嫌な衝撃が走った。こいつはかなり面倒だと聞こえないように呟いた。

「お昼のついでに、ミーティングだな。ユウト、メモの用意は?」
「ありますよ。毎日そうですから」
「あー!なんでユウトばっかり!僕もいるんだよ!?」
「そうだったな。だけど練習内容だけだから、な?」
「むー」

そう、教師と生徒が一緒に昼を食べるなんて中学までだ。そんなオレたちが一緒に食べる表向きの理由としているのがミーティング。オレとユウト、ユセはリンドウが顧問の剣道部、コウタとアリサはサクヤが顧問の弓道部。昼にミーティングしとけば部活もすぐに練習できる。しかし実際の理由は、オレたちが全員幼なじみというだけ。小さい頃にリンドウやサクヤがオレたちと遊んでくれ、彼らが大学に行く頃になるとさすがのオレたちも遊んでもらえる機会が減った。小中と一緒だったオレ、ユウト、ユセ、コウタ、アリサは受験はどうするか悩んだときに、やっぱやりたい部活が強豪とこだよなー、と言ったコウタに釣られ今の高校に進学した。そしたら全員同じ高校で、まさかのリンドウとサクヤとの再開を果たしたのだった。


******


「卵焼きもーらいッ!」
「ちょっと、コウタぁ!僕の卵焼きー!!」
「ユセ、私の卵焼きあげるから、落ち着いて!」
「コウタ、うるさいとここから落とすよ?」
「うわっ、ユウト黒いって!」
「ほーら、暴れないの。お弁当、ひっくり返るわよ?」

ぎゃあぎゃあ騒ぐコウタとユセの声をBGMに昼休みが過ぎていく。まあ片耳にはイヤホンを突っ込んで音楽を聞いていたけど。
レタスとトマト、ハムが挟んであるサンドイッチを腹に入れパックに入った牛乳を啜った。天気がいいなと思いつつ、明日もこうやって時間が流れていくんだなと何処か楽しみにしている自分がいた。


そんな昼休み

(ぎゃあぎゃあ騒いでる声も)
(この時だけは心地いい)


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