配給ビールで乾杯!
珍しく近距離型だけの(ユウトは可変式の神機を使うがほとんど狙撃しない)出撃から帰ってきたユウトとソーマは、同じく出撃していたリンドウに誘われて、彼の自室へ赴いた。
「おぉ、待ってたぞ。とりあえず座れ座れ」
ノックをし、リンドウの部屋に入ると窓には綺麗な夕日が映っていた。彼はソファーに腰掛けくつろいでいた。
ソーマはさっさとソファーに腰掛けてしまい(リンドウより少し離れて)、リンドウはリンドウでほら早く座れよとにこにこと笑っている。ユウトは失礼します、と遠慮がちにソファーに座った。
「今日のミッション、お疲れさん…っと。まぁ、それだけで俺の部屋に呼んだわけじゃないんだが」
リンドウはソファーから立ち上がり、備え付けの冷蔵庫を開け何かを持ち出した。彼の手に持たれていたのは配給されたビール数本。
「ユウトの入隊祝いやってなかったしな。とりあえず飲め」
テーブルの上に置かれていくビール。でもユウトはぎりぎり未成年である。飲めない。飲めるわけない。ソーマはソーマで年齢ぐらい知ってんだろ、とリンドウを睨むばかり。彼はソファーに座りビールの缶を開けると一言。
「ひとりだけで飲むのもつまんねぇから付き合え。飲んだことは黙っとくから」
*****
意外にもいちばん初めに酔い潰れたのはソーマだった。ソファーのひじ掛けを枕に眠ってしまった。そんな彼に気をきかせてリンドウは毛布をかけてやった。
「ソーマって、意外と酒に弱いんだな。こいつが成人したときには気をつけねぇと」
「リンドウさんはお酒強いんですね」
「そういうお前もだ、新型。強いんじゃねぇのか?」
「……今までお酒ってまずいのかなって思ってたんですけど、意外といけますね」
そう言いながらユウトは新しい缶を開ける。リンドウはそれを笑いながら見ていた。
「あー、なんか食べるか?簡単なものしか作れないけど」
「リンドウさん僕が作りますよ。結構料理には自信があるんで」
おー、と返事をしたのを確認してから簡易キッチンに立ち調理を始めた。
「……リンドウさんは、どうしてゴッドイーターになったんですか?」
突然そんなことを聞き出したユウトにちょっと驚いたリンドウだったが、少し考えてからそうだな、と言葉を続けた。
「大切な人を守りたかったから、かな。ただそれだけだよ」
「大切な人を守る……サクヤさんとツバキさんですか?」
「まぁ、そうなるわな。姉上はああ見えて結構無茶するから…」
けらけら笑いながらそう話したリンドウにユウトは何も言わなかった。ただ、羨ましいと思った。
「僕は…新型の神機適応候補者って聞いたとき、正直迷いました。特別守りたかった人もいなかったし、生活にも満足してた。でも、それでいいのかって考えました」
調理の手を休めることなく、ユウトは言葉を続けた。リンドウは背を見つめながら話を聞いていた。
「アラガミに苦しめられている人がたくさんいる中で、僕には力があるかもしれないって知った。その力を使わないでこのまま守られて暮らしていいのかって……本当はゴッドイーターになるのは嫌でした。なる理由がないのに戦うってことが嫌なんです」
サクヤにもこっそり伝えた辛い気持ち。リンドウになら言ってもいいかなと思いすべてをぶちまけたユウト。ソーマに聞かれたらまず殴られるから寝てる隙を狙ったのもあるが…。
「理由、ね……それはこれから見つければいいんじゃないか。きっと見つかるさ」
「これから、ですか…?」
「そう、これから。お前ならきっと見つけられる。俺はそう思う」
「………リンドウさんに話してよかった…少し楽になりました」
「辛くなったらいつでも言いに来い。これもリーダーの務めだからな」
「…り、リンドウさん、できましたよ。もう一度飲みなおしましょう」
作ったつまみをテーブルに置き、ビールの缶を開けた。プシュっという音が部屋に響く。
「それじゃ、入隊おめでとう&これからもよろしくっと…」
「よろしくお願いします、リンドウさん」
カツンと缶どうしがぶつかる軽い音が再びなった。
配給ビールで乾杯!
(しっかし、お前よく飲めるなー)
(……明日、二日酔いになったらリンドウさんのせいにしますね)
(ちょ、なんで!?)
(もとはと言えばリンドウさんが誘ったから飲んでるんですよ?)
ソーマが途中から空気。つかしゃべってない←←
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