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「鬼道さん、トリックオアトリート!!」
「………はぁ?」

10月31日。
部活も終わり帰宅しようとしていた鬼道の前に佐久間が現れた。なんで雷門にいるのか尋ねようとしたところ、両手を突き出してきた。そして冒頭に繋がる。

「鬼道さん、トリックオアトリート!」
「……いやそれさっきも聞いたんだがな。いきなりどうした」
「今日はハロウィンですよ。だからトリックオアトリートって聞いたんですけど?」

ハロウィン。
そういえば今日だったかと鬼道は思った。こういうイベントが好きそうな円堂やマックスが絡んでこなかったためすっかり忘れていたのだ。それと同時に失念したと内心毒を吐いていた。

「……今、お前にやるようなお菓子はない」
「じゃあ、イタズラしていいんですね!?」
「ここでか!?」

手をわきわきさせながら近づいて来る佐久間に身の危険を感じた鬼道は持っていた傘をとっさに構えた。それを見た佐久間は冗談ですよー、なんて言っていたが鬼道にはとてもそう見えなかった。

(目がマジだった……!)
「んー…ハロウィンは今日だけだし、これが過ぎてからのイタズラもなぁ…」
「佐久間、オレは帰るぞ。来週テストなんだ」

逃げるが勝ちと思った鬼道は適当な理由をつけさっさと帰ろうとした。が、それは叶わなかった。いつの間にか佐久間が肩からかけていた鞄の紐をがっちりとホールドしていたためだ。

「ね、鬼道さん。これから鬼道さんの家に行ってもいいですか?」
「い、今からか!?お前、親が心配するんじゃ…それに学校も!」
「親は出張で明日の夜まで帰ってきません学校は代休で休みです」

にっこりと笑ったまま一息で鬼道の質問に返した佐久間。もしかして逃げられないんじゃ、と鬼道は心の中で思い、そして諦めた。

「……わかった…一緒に帰ろうか……」
「え、いいんですか!鬼道さん、だーい好き!」

鞄の紐から手を離したと思ったら、佐久間はそのまま鬼道に抱き着いた。いきなりのことで、しかも校門前で……鬼道の顔は一気に真っ赤に染まった。

(こ、これが、イタズラでやってるならとんでもないイタズラだ!)

佐久間に抱き着かれながら家に帰った後の予定を混乱気味の頭で組み直している鬼道がそこにいた、満更でもない顔をして。


とりっくorとりーと!

(鬼道さん、イタズラ覚悟しててくださいね?)
(佐久間、お前どんなイタズラする気なんだ……)


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