アザレア

「んー…」

朝日を全身に受け目覚める。カーテンが開かれた窓の外では小鳥が鳴いていた、まるで朝の訪れを喜ぶかのように。隣に寝ていた彼はもういない。きっと朝食でも作ってるんだろう。あぁ、いい匂いがする。彼の香りが残るベッドが恋しいが起きなければ、彼には会えない。

(今までこんな幸せはなかった)

寝室を出ると更にいい匂い。焼けたばかりのトーストの匂いだ。それはオレの鼻孔を刺激し空腹感を強くする。キッチンに目を向ければ彼がいた。サファイアのような眼はいつも綺麗だ。その眼はもちろん、声も姿形も大好き。

(愛なんて、ピンとはこなかった)

「おはようございます、アテムさん」

わかりにくいけど微笑んで声をかけてくれる彼。

「お、はよう、遊星」
「ちょうど起こそうと思ってたんです。朝食出来てますよ」

出来たばかりなんだろう、サラダを運びながら彼──遊星は言う。いつもは相棒が食べていた、朝食。遊星と暮らし始めてから、正しくは遊星の時代に転生してから食べるようになった。今の時代の両親は忙しい人で、食事なんてひとりが当たり前だった。

(遊星と再会してからぐるりと変わった)

「アテムさん、どうですか?」
「美味いぜ、遊星。いつもありがとな」
「いきなりどうしたんですか?」
「ん?言いたかっただけだぜ?」

そう、言いたかった。一緒にいてくれること、一緒にご飯を食べてくれること、オレに愛を教えてくれたこと。全てに感謝を。

「遊星……大好き」
「オレもです」


()

(今、この瞬間に感謝を)
(愛されることがこんなにも素敵なことなんて!)


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