エーデルワイス

ヨーロッパを放浪していた頃、買い溜めていた食料や先立つ資金が同時に底を尽きかけたことがあった。資金調達のためにしばらく小さな街で住み込みで働くことにした。小さな喫茶店ではあったが、店長もいい人で店は毎日賑わいを見せていた。
ある時店長に買い出しを頼まれ外へ出たとき、小さな女の子に声をかけられた。

「お兄ちゃん、お花買わない?」
「花?」
「うん。今日摘んだばかりだよ」

それは綺麗な白い花だった。花なんていろんな場所を放浪していたからたくさん見ていた。けど、何故かその花に惹かれた。

「……じゃあ5本ほど買うよ。飾ると綺麗だろうから」
「ありがとうお兄ちゃん。はい、エーデルワイスをどうぞ!」
「エーデル、ワイス…」
「あのね、エーデルワイスの花言葉は大切な思い出、なんだよ?」

(大切な思い出、か…)

オレの大切な思い出って言ったらあの頃だろうか。仲間たちとわいわい騒いで先生に怒られたり、毎日毎日デュエルに明け暮れた、デュエルアカデミア。

(みんな、どうしてるだろう)

卒業式後、仲間とは一切連絡を取ってなかった。ふらっとみんなの前から消えたから連絡しにくかった、ただそれだけ。それにいまさら、という気持ちもあった。

「お兄ちゃん…?」
「あ、ごめんな。これ、花代な」

女の子に花代を渡し(もちろん自分の生活費から)、買い忘れていたものを求めて雑貨屋へと足を向けた。買ったものが入った紙袋の他に新聞紙で丁寧に包まれた白い花を小脇に抱えながら。


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(今度ちょっとだけ連絡を取ってみようか)
(その時は頼むぜ、相棒?)


End


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