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*頂き物(フリリク)
*9万打フリリク記念
*アテム視点&遊星視点
*シリアス
遊星の腕を引っ張った。驚きに目を見開くのが見えたけど、俺は構わず引っ張った。遊星はすぐに了承して、黙ってついて来る。
向こうの浅瀬では、さっそく十代たちが遊び始めている。はしゃぐ声が響き渡る。そんな中で俺は遊星を引っ張って浜辺を歩いていった。歩いて、歩いて。
「岩礁ですね」
そうか、これは岩礁というのか。遊星の言葉に頷いた。
「ここを一緒に歩きたかったんだ」
「海に入らなくていいんですか?」
「海水は苦手だ」
サンダルもあまり履き馴れない。ゆっくりと岩と岩を渡っていく。
「滑らないでくださいね」
「そこまでドジじゃないさ」
俺は笑いながら答えた。確かに岩の上は足場がしっかりしていないし、濡れていて歩きにくいなと思ったが。それでもそこまで心配される覚えはない。
だが遊星は後ろで小さく笑っていた。まったくこいつときたら。
「きみこそ、いいのか。勝手に連れてこられたのに」
「連れてこられた? 連れて来てもらったのではないのか?」
「そうか、そう受けとるのか」
「置いていったら泣きますよ」
「あはは! 見てみたいな、置いていかれて泣く遊星」
思いっきり笑えば遊星が後ろで苦笑していた。冗談ではなく本気だったからこそ言い返せなかったんだろう。それくらい、何も言わなくても分かる。
「海の楽しみ方を間違えているかもな」
「え?」
「泳ぐより、ここから遊星と一緒にずっと海を眺めていたい」
浜辺に行って、海を見て、一番最初に思ったことがそれだった。その思いに突き動かされてここまで引っ張ってきて。
海は太陽の光を受けて、キラキラ輝いている。遊星はスッと俺の手を握って微笑んだ。
「俺でよければ、喜んで」
「きみでよければ? 愚問だな、エスコートにはきみ以外を選ばない」
ギュッと握り返して答えれば、二人同時に笑い始めていた。繋いだ手をそのままに俺たちはまた岩を渡る。
*****
世界に、二人だけみたいだ。そう思った。周りには海の音しかなくて、アテムさんはポツポツと言葉をこぼすだけ。
みんなで海に来ることになって、楽しみではあった。だがきっとアテムさんと二人きりなんて夜だけだろうなと思った、そうしたらまさかのこれだ。驚きを隠せただろうか。喜びを隠せただろうか。
「そういえば二人で海なんて行ったことなかったな」
「夏なのに、一回もそんな話題が出ませんでしたね」
「んー……行くなら冬の海がいいぜ。その浜辺を二人で歩きたい」
「了解、覚えておきます」
ああ、確かにそっちが似合うな。想像して微笑んだ。冷たい風に、穏やかな波の音。そこに彼がいるのを想像しただけで、胸がときめいた。
「やっぱり暑いな、まだ」
アテムさんは顔を覆った。ジリジリと照りつけてくる太陽に辟易しているみたいだ。
「海、入りますか? きっと冷たくて気持ちいいですよ」
「……日差しが強いから、あまりパーカー脱ぎたくなかったんだが」
アテムさんは水着と、上半身はパーカーを羽織っていた。強い日差しを避けたかったらしい。俺としてはやはりその肌が他人の目にさらけ出されるのは好ましくなかったので、その配慮がとても助かった。
俺もまだ海に入る予定はなかったので、Tシャツを着たままだが。
「脱ごう、アテムさん」
「は?」
素早くパーカーを脱がして奪った。近くの岩にかけて、自分のTシャツを脱ぐ。そしてポカンとしたままのアテムさんにそれを着せた。Tシャツなら、濡れて構わないから。
「……遊星? う、わっ」
その体を一気に抱き上げる。アテムさんは反射的に俺の首にギュッと抱きついた。
近くに岩がないことを確認して、足場からゆっくり海水に浸かっていく。アテムさんが溜め息をつくのが聞こえた。
「やはり、気持ちいいな」
冷たい海水がやはりいい。呆然としているアテムさんは、小さく呟いた。
「海水は苦手だと言ったのに」
「それはすまない」
「そんなことまったく思ってないくせに」
アテムさんはそう言うと、俺の胸をペタペタ触り始めた。また唐突な行動に首を捻る。
「海の中で触れると、やっぱり感触も違うものだな」
「………………」
濡れた手は、生々しい。その感触がとてもリアルで。
「結局、泳ぐという発想はないんだな……」
アテムさんは苦笑する俺の胸にピタッと頬をくっつけて、その感触を味わっていた。ペタペタ、ペタペタと。密着して、離れる気配がない。
襲うぞ、いやさすがに海中ではしないが。だが遠慮なく触ってくるこの人にもて余す熱はどこへぶつけたらいいのやら。やれやれ、困ったものだな。
俺はせめて大きな溜め息でごまかした。
*****
しばらくは海にいた。俺が遊星にずっと触ってたせいで、上がる機会を失った。
海水は苦手だ。だけどひんやり冷たい海の中で感じる体温とか、濡れた肌の感触とか。なぜか、好きだ。だからピトッとくっついたまま、離れがたくなる。
だから泳ぐというよりはずっと漂ってた。ゆらゆら、ゆらゆら。世界に二人きりみたいだ。漂いながら、一回だけキスをした。海の味。
「随分、時間が経ったな」
遊星の声が響いた。敬語ではないそれは、つまり俺への言葉ではない。見上げれば、遊星は沈もうとしている夕日を見ていた。
「ああ、もう日が暮れるのか」
段々と空が橙色に染まろうとしている。遊星が俺の手を掴んだ。
「上がりましょう、体を冷やす前に」
「……分かった」
あんなに海水に入りたくないと思っていたのに、今は惜しい。まったく俺はどうしてしまったのだろう。
岩礁に上がっても体を冷やすどころか、なかなか熱が消えなかった。消えない、消えないぜ、遊星。
「綺麗ですね」
遊星は俺ではなく、まっすぐに夕日を見ていた。橙色が深くなり、海の輝きが変わる。眩しい色ではなく、淡くて深い色に。
「結局、半日ここにいてしまいましたね」
「腹が減った」
「ムードがないな……まあ、何も食べてないから仕方ないですが」
だからと言って、今すぐ戻ろうなんて考えられない。戻れない。終わりなんて、決められない。
この二人きりの世界に、俺たちは終止符を打てない。
「……遊星」
たくましい体躯が橙色に照らされているのが、とても眩しく映った。僅かに振り向いた遊星と視線が出会って、やっと気づいた。
そういえばこいつ、自分のTシャツを俺に着せたせいで着るものないじゃないか。水分を吸いすぎたこのTシャツを今更返す気にはならないし、俺のパーカーは遊星のサイズには合わない。
まったくなんでわざわざこれを着せて海に入れたんだか。パーカーよりは海に濡らしても大丈夫だが……俺も半裸でよかったのに。
「遊星、戻ろうぜ」
体を冷やしたらダメなのは、遊星の方だ。それに気づいたらもう、口はその言葉を紡いでいた。
だけど遊星は俺をじっと見つめている。じっと見つめている。まっすぐで、強くて、射抜くような目線。だけどどこか熱が込められたその視線を俺は知っている。
「遊星、……!?」
いやまさか、まさかだよな遊星。べ、別に嫌な訳じゃないぜ? た、ただそれは帰ってからでいい、第一ここ岩礁、だからだな、つまりだな。
「本気か、遊星?」
「……たぶん」
「たぶんってなんだ」
俺の肩を掴んだ力の強さにビクッと震えてしまったが、最初にこいつを連れて来たのは俺だ。その力に勘弁する。
ああ、相棒の怒声が聞こえる。
そんな気がした。
*****
「どこ行ってたの、きみたち!!」
ビーチに戻って一番に聞いたのは、遊戯さんの怒声だった。大きな丸い瞳でキッと睨み付けられるのは、なかなかに罪悪感を誘う。
俺でもそうなのだ、隣にいるアテムさんは尚更だろう。彼にとって遊戯さんの存在は大きいし、誘ったのは自分だという手前もある。
「二人同時にいなくなるからどうせ一緒にいるんだろうと思って好きにさせたけど、今何時だと思ってるのさーっ!」
その問いの答えは、知らない。
知っているのは夕日はすでに沈み、空には満天の星空が輝いていることだけだ。ああ、今夜は月が綺麗だな。
「す、すまない相棒……後できちんと謝る! 謝るから先にシャワー浴びていいか? 体がベタベタして気持ち悪――」
「ベタベタって……人が心配してたときに何してたの!?」
「ち、違うぜ! 海水! 海水がな!」
相変わらず二人の会話は和むなと当事者なのだが微笑ましく見守っていた。確かにアテムさんが誘ったのだが、遅くなったのは確実に俺のせいである。
だからこのままアテムさんを困らすのは不本意なので、せっかくの和む会話だが介入させてもらう。
「遊戯さん、俺からもお願いします」
「ゆ、遊星くんまで……」
「先にアテムさんだけでも」
「なっ…! 遊星、お前の方が体を冷やしてるんだからお前からだろう!」
「いや、俺はアテムさんのおかげで温まっ――」
「黙れーっ!!!」
そんな俺たちを見て、遊戯さんはとうとう頭を抱えた。ごめんなさい、すいません、ごめんなさい。
内心で謝るが、今目の前で顔を赤らめて睨んでくるアテムさんから逃げる方が優先だった。
「分かった、もういいよ」
遊戯さんはピッと指差して、俺たちに言った。
「シャワー浴びておいで。それでもう家に帰ろう。帰ったら、覚えておいて」
「「…………………………」」
二人揃って閉口した。きっと長い長い説教が待っていて、寝られないに違いない。
俺たちは顔を見合わせると、同時に苦笑した。
茜色の光
(そういえば遊星、なんで俺にTシャツ着せたんだ?)
(え? あ、……あまり肌を露出してほしくなくて)
(その後、脱がせたくせに?)
(それはいいんだ)
(……分からない)
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11'11/17 更新
遅くなりましたが、遊梨さんへ! リク内容は『遊闇で海デート』でした!
一応二人きりなのでデートにしてくださいませ(汗) それにしても季節外れにも程がありますねっ!!!
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梨亜さんのサイト9万打記念フリリクとして遊闇で海デートを頂きました!!
遊星にぺたぺた触りまくる王様がかわいくて仕方ありません、ふたりとも家に嫁婿に来ないk(ry
素敵な遊闇をありがとうございました!!
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