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遊星がガレージの中でD・ホイールの整備をしていると後ろから声をかけられた。

「遊星、ちょっといいかしら」
「アキか」

声をかけたのは十六夜アキであった。アカデミアからの帰宅途中なのか、高等科の制服を来ていた。

「ねぇ、原爆の日って知ってる?」
「原爆の、日……?」
「えぇ…ちょっと課題が出されて原爆の日について調べなきゃいけなくて…」
「……オレもよく知らないからな…調べてみるか…」

遊星はそう言うと手に持ってた工具を置き、グローブを外した。一度席を立ち、パソコンに手を伸ばした。

「たっだいまー!いやー、今日は忙しかったぜ……って十六夜、来てたのか?」
「えぇ。クロウも大変そうね」
「どっかの元キングが働いてくれれば楽なのによ」
「もう、ニートラスって呼ぼうかしら……」

デリバリーの仕事を終え、帰ってきたクロウは、日頃の(主に元キングの)愚痴をアキにぶつけた。さすがに呆れ返ったアキはクロウに同情するほかなかった。

「あれー、来てたんだ?」
「ブルーノ。ちょっとね」
「なぁ、ジャックは?」
「ジャックなら出掛けたよ」

これまたタイミングよく帰ってきたブルーノ。その手にはたくさんの紙袋が抱えられていた。

「アキ…見つかった。見つかったが……」
「どうしたの…」
「……ゼロ・リバースよりも酷いんだ…」

それから遊星は探しだした文章をかいつまみながら話しだした。

オレたちが生きる時代からはるか昔。
戦時中、ヒロシマに原子爆弾──原爆が投下された。それは、8月6日の朝の出来事。一瞬にして、多くの人が亡くなった。爆心地より離れていた人でも被爆し、病に苦しんでいる人もたくさん……
ヒロシマの原爆投下から数日後、ナガサキにも原爆が投下された。

「酷い…」
「本当は、有り得ちゃいけないことなんだよね…」
「人同士が争うって……酷いんだな……」

しん、と重い空気が支配するなか、場違いな音が鳴り響いた。

「おい!オレのD・ホイールのメンテナンス終わったか!?」

先程まで居なかったジャック・アトラスがいきなりドアを開けて入ってきた。
今までの空気がぶち壊されて、クロウが怒りの声を上げた。

「こん、の……バカジャック!!」
「いきなりバカとはなんだ!?」
「空気読もうよ、ジャック」
「そうね。空気、読みなさいよ」
「そうだな」

クロウの怒りの声に続き、遊星、アキ、ブルーノも呆れの声を挙げた。





















「あー、ジャックのせいで気分がおかしくなったぜ」
「黙れ、話をしていたなど知るわけないだろ」
「遊星ありがとう。レポート、いいのが書けそう」
「そうか」
「僕、お茶入れてくるよ」

一騒動後、遊星たちは席に落ち着いていた。ブルーノは席を離れキッチンへ向かった。

「……人が造る兵器って恐ろしいわね。一瞬で多くの生命を奪ってしまう」
「そうだな。オレたちは伝えるべきなんだろうな……ゼロ・リバースも原爆の日のことも…」

──二度と同じ悲劇が繰り返されないように……


End


*あとがき*
今は平和に暮らしてる私たちだけど、少し前には考えられない(今の状況で)ことがありました。今回、このような形で書かせていただきました。私たちは、このような事実を過去の出来事として捉えるだけでなく、伝える必要もあると思います。


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