ぶるり。


『んっ…?』


いつもは感じないその冷たさに僕は目が覚めた。
頭がうまく回らない……けど、今は何時なんだろう。
まだ周りが暗いし、寝入ってからそんなに経っていないはず。
僕の予想ではだいたい亥の刻といったところか。

それよりも、何故こんなに寒い?

だんだんと覚醒してきた意識の中で、僕は横を確認した。
あああ!
いつもいるはずのあの子がいないじゃないかー!!


『ジュンコ!!ジュンコ、どこに行ったんだい?!ジュンコォ…!』


僕の横で愛らしく眠る彼女の姿がなかった。
ああ、ああ…!
どこに行ってしまったんだジュンコ!
布団から出て部屋の中をくまなく探したけれど…彼女の気配がしない。
きっとこの部屋にはいないだろう。
僕の感がそう言っている。
じゃぁ彼女を探しに行かなければ…!
急いで夜着を整えた僕はある場所を目指した。




『と、いうことなんです。お願いします竹谷先輩』

「と、いうこと……じゃねーよ…孫兵…今何時だと思ってんだ…ふわぁあ」


僕が向かったのは生物委員会委員長の竹谷先輩の部屋。
先輩は寝ていたらしく(まぁこの時間当たり前か)、欠伸を噛み殺して出て来てくれた。
次に僕が先輩にジュンコ探しを手伝ってもらうようお願いしたら…この反応。
先輩、お言葉ですがジュンコがいなくなったのは一大事なんですからね!


「…わかってる。大事な後輩が困ってるからな、俺も探すよ」

『! ありがとうございますっ』


なんだかんだでこの人はお人よしな先輩なんだ。
僕や一年生のしてしまった失敗も全部背負って助けてくれるその先輩の背中に…実は憧れていたりする(言わないけど)。
今回もお世話になります、と告げて、二手に別れてジュンコを探すことにした。


『ジュンコ〜ジュンコやーい、出て来ておくれー』


夜中だからあまり声を荒げることはできないながらも、小さな声でジュンコを呼び続ける。
はぁ…、ほんとにジュンコは見つかるかな。
さすがに忍たまの部屋には入れないから(もう遅いし…いたら教えてくれるだろ)廊下を探しながら歩いていく。
下にいないかとか、柱に上ってないかとか…。
ほんとジュンコは僕に心配かけるのが好きだよな。

なんて、ちょっと暖かい気持ちになりながら探していた。


「お前も、眠れないのか…?」

『?!』


誰かの声が聞こえて、驚いて辺りを見回した。
視界に人は見当たらない。
廊下の角を曲がる。
縁側に誰かいるようだ。
ここからじゃ顔が見えない。
誰だろう…。
それにしても、今の一人言?


「シャー」

「…私も眠れないんだ。夢見が…悪くて、な」

「シュゥゥ」

「! 慰めてくれてる、のか…?」

「シャー!」

「…………ありがとう」


鳴き声でわかった。
ジュンコと誰かがしゃべっているらしい。
今だにその人は背を向けているから誰かわからないけど。
……僕は近場の忍たま部屋の札を見た。

六い。

あそこにいる人は少なからず六年生なんだろう。
興味が沸いた。
ジュンコは僕以外の人に懐くなんてほとんど…、いやまったくない。
ここからじゃよくわからないけど、ジュンコがその人の首に擦り寄っているみたいだし。


「……私は動物に触れない、悪いが、離れてくれないか?」

「シャーシャシャ!」

「……困った」

『っ!』


視線を感じて廊下の角から乗り出していた身を隠した。
たぶん気付かれた!
いや…もう気付いていたのかもしれない。
ドキドキドキ。
……って、何で僕がこんな緊張しなくちゃいけないんだ。


「…この子、お前の子か?」

『?! えっ、あ…!』

「驚かして悪い…、もう夜も遅いから…早く寝なさい」


目の前にジュンコを連れたその人がいる。
月明かりで綺麗な顔が映し出されて、僕の頬が熱くなった。


『(うわぁ…///)』


見つめられて僕は目が離せなくなる。
なんて美しい人なんだろ…。
首に巻き付いていたジュンコが自ら僕の方に寄って来たので、手を差し延べてあげた。



「おーい、孫兵…?どうしたんだ、ぼーっと立って…あ!ジュンコ見付かってよかったな!」

『あ、竹谷先輩!……はい、一緒に探してくれてありがとうございました…』

「? 顔紅いけど、大丈夫か?」

『え?! あ、はい。大丈夫です…//お、おやすみなさい竹谷先輩!』

「おお!明日の授業遅れないようになーおやすみ!」


ジュンコを僕に渡して颯爽と去って行ったあの先輩が誰なのか気になりつつ、僕は部屋に戻るのだった。

なぁジュンコ。
お前が気に入ったあの先輩、何て名前だったか知らないか?







110605

……………………
そういえば三いって孫平だけでしたね