スタッ。


『学園長先生、お呼びでしょうか?』

「おぉ名前か。早かったのぅ、まぁくつろいでくれ」


授業も終わり委員会のない放課後。
今日は何をしようか考えていれば、ヘムヘムに呼ばれ学園長先生の庵に来た。

まぁ大方予想はついているのだが。
学園長先生による学級委員会への雑務。
簡単なおつかいから難しい忍務まで幅は広い。
一年生はまだおつかいしかしていないとは思うが、五年のあいつらはもう忍務を受けたんだろうか…。
だとすればもう手を真っ赤に染めた、かもしれないな……なんて考えながら目の前の学園長先生の指示を待つ。

あ、ヘムヘム。お茶悪いな。


「名前、お前に雑務を命じる!」

『はっ』


私は膝を降り、下げていた頭を上げれば………学園長先生の満面な笑顔があった。
これは。
とってもいやな予感がするんだが、ヘムヘム。
ヘムヘムも私の気持ちを察したらしくオロオロし始めたが、学園長先生は私に顔を近付けて、おっしゃった。








『……鉢屋三郎、尾浜勘右衛門』

「まさか…名前先輩が私たちに会いに来てくれるなんて!」

「俺たちじゃなくて、名前先輩は俺に会いに来てくれたんだよね!嬉しいなぁ」

『…………はぁ。どっちかでいい。女になってくれ』


「「………えっ//」」


ちょうど二人で居たとこを見かけて声を掛けたはいいものの、な、なんだ顔紅くして…どうしたんだ?

学園長に団子のおつかいを頼まれた。
まではよかったのだが、そこの甘味処、お、女限定らしい。
つまり学園長は私に女装をしろと……だからあんなにいい笑顔をしていたわけだ。
「ワシは名前の女装が見たいんじゃ〜」と泣きつかれたけど丁重に断りここにいる。


「そういうことならもっと詳しく説明してくださいよ//」

「名前先輩の彼女にしてくれるかと…あ、でもどっちかといえば私が彼氏で先輩が彼女か」

『な、何勘違いしてる…!//って、今はそれはいいから、どっちが女になってくれるんだ』

「名前先輩とデートできるなら喜んでなります!」

「私も!だけど個人的には私たちが女装するより名前先輩にしてほしいんですけどねー」

『……女装はできる限りしたくないんだ』

「えー見たかったです」

「可愛いんだろうなぁ名前先輩の女装」

『………』


女装はしたことはある。
何度か授業の一貫としてやった。
その時は町で忍者だとバレずに買い物をしてくるというシンプルなものだったんだが…。
すごかった。
たくさんの視線を浴びるわ、声掛けられるわ。

町娘を装ったものだったから手荒な真似はできなかったし…その時はギンギン会計委員長が助けてくれたが。
もうあんな疲れることはしたくない。

で、だ。
私のことはどうでもいいだろう…!

どちらについてきてもらえばいいか…。
鉢屋三郎は変装が得意らしい。
普段は不破雷蔵に変装しているらしく(この前食堂であった変な鉢屋三郎は不破雷蔵だったようだ)町娘なんて簡単だろう。
ここは鉢屋三郎が適任か?
ニヤニヤ笑っている鉢屋三郎に声を掛けようとして、


グイッ


反対側から手を引っ張られた。


『な、にするんだ離せ//』

「いやですよー、だって先輩、鉢屋に頼む気満々だったじゃないですか!俺も行きますよ!」

「おい勘右衛門お前空気読め!名前先輩は私とデートがしたいんだ」

「んなわけないでしょ。鉢屋の変装技術を買っただけだよ。ほんとは名前先輩は俺と行きたいんだ。ただ俺に女装させるのはかわいそうだと思ってくれて…」


『だー!ふっ二人ともさっさと女装してこい!//』


結局こうなるのか…。







110514

……………………
勘ちゃんの女装見たい