ガラガラガラ。



『失礼します』




昼休み、僕は特にやることがなかったので図書室に足を運んでいた。

午後の授業は今日はない。


昨日読んでいた兵法の続きが気になったから来たんだけど、今日は珍しい先客が居た。
僕の視界には仲良く二人で本を持つ中在家先輩と…あれは名字先生?

って!




『(あの中在家先輩が軟らかい表情で笑っていらっしゃる!!)』




何を話しているかまでは聞こえなかった(まぁ中在家先輩だしね)けど、いつものあの怖い笑顔はない。

ほんとにふわりって感じで。



僕初めて見たよ、あんな先輩。
そしてそんな表情をさせた名字先生って…どんな人なんだろう。


確かに兵助や勘ちゃんに聞いた限りはいい人(あと可愛いらしい人とも言ってたな)みたいだけど…、
でも間者じゃないかって先輩方は噂されてたし、


うーんうーん…。




「不破」


『わあ! なっ中在家先輩。ど、どうされました?』


「…名字先生の手伝いをしたい、図書室…頼んでいいか?」




びっびっくりした。


いつの間にか先輩と名字先生は目の前にいらっしゃった(また僕の悩み癖が発動しちゃったのか)。
すると中在家先輩の後ろからひょっこりと名字先生が顔を出す。

なんだか小動物っぽい、かも。



『(うわ…上目遣い///)』


「すみません、中在家くんをお借りしてしまって…。えっと、不破雷蔵くん?」


『あ、いえ、僕もちょうど暇だったから大丈夫です。…それで、なっ何で僕の名前///』




中在家先輩は名字でしか僕を呼んでいない。
何で名前知っててくれたんだろう//
変な期待をしてしまう自分がいる。

何だか気恥ずかしくなって下を向いていたら名字先生は「内緒ですっ」と一言言った。
そのふっくらとした唇に人差し指を当てて。


あああ…名字先生可愛いすぎる!//

おっ男の先生なのに!
僕ってば、実は…?!




うわぁどうしようどうしよう!










「ふーん…で、もしかしたら自分が男色があるかもしれないって悩んでたのか雷蔵は」


『だっ、だって名字先生すごい可愛らしかったんだもん…』




あの後上の空で図書室で仕事をして帰って来た。
んだけど、同室の三郎に僕が悩んでることがばれてしまった。
三郎いわく僕は顔に出るからわかりやすいんだって。


それって忍者としてどうかと思うんだけどさ…。
こればっかりは直りそうにないな。


で、三郎…


何さっきからにやにやしてるのさ!
もうちょっと僕の悩み親身になって聞いてくれよ!




「まあそう怒るなよ」


『怒りたくもなるさその顔//』




そう、今三郎は顔だけ名字先生に変装している。
綺麗な顔なのにニヤニヤして!

その顔で僕と顔を近付けるんだからたちが悪い。

三郎とわかってても心臓がうるさい……相当重症だ。




「まぁそれが普通だから、雷蔵は気にしなくていいんじゃないか?」


『? どういうこと?』


「兵助も勘ちゃんも先輩方も、それから雷蔵も…皆変じゃないってことだよ」


『??』





「私も名字先生に会いたいなぁ。おちょくるのが楽しそうだ!」







三郎の言ってる意味はよくわからなかったけど、
とりあえずからかわれるだろう名字先生を助けてあげよう。









101223

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久しぶりの更新です