今日も空はいい天気だ。


ターコちゃん14号(まだ作りかけで全然深さがないけど)から見る景色は最高だと思う。

んーいいね、だから蛸壷作るのはやめられない。




『?』




いきなり視界が暗くなった。



と思ったら声にならない叫びと一緒に、僕の今回の落とすべき¨ターゲット¨が落ちてきた。

おやまあ。


まだターコちゃん未完成だったのに…まあかかってくれたからいいにしよう。




『ね、名字先生?』




「…何ですかこれ落とし穴?」


『いいえ、蛸壷のターコちゃん14号です』



先生は何か膨大な書類を両手で持っていた。
故に受け身ができなかったみたいで
現に尻餅をつき痛そうにしている。



僕はこの人に興味があった。

綺麗な容姿で優しい先生と言われる名字先生は、何故か上級生には深く関わろうとしない…らしい。


何で?



そして僕とはどう接するの?




「このターコちゃん14号ってまだ途中なんでしょう? それにしてもよくできてますね」


『…(どうしよう誉めてきた)』


「こんな落とし穴…蛸壷なら、先生も落ちるわけです」




名字先生はターコちゃん14号を手で触り苦笑した。

その笑った顔がとてもふんわりしていて、蛸壷から見た太陽に似てる…かも。



僕の大好きな、




『…綾部喜八郎』


「? 喜八郎くん、ですか?」


『喜八郎』


「……あの、」




『そう呼んでくれないと離しませーん』




ぎゅううう、


後ろから名字…いや、名前先生を抱きしめた。

すごくいいにおい。

女の人のような甘いにおいがする。


名前を呼び捨てにしてくれないからちょっと悪戯しちゃおう。
白くて細い目の前の首筋を舐めると、先生はビクッと飛び跳ねた。


うわあ、後ろからでもわかる。
先生顔真っ赤。

どうしようすごく色っぽい。




「わかっ、わかりました喜八郎!」




変なの。


蛸壷掘ってるわけじゃないのに、名前を呼び捨てにされただけで

こんなに嬉しい自分がいる。




「…いつになったら離してくれるんですか?」


『いいじゃないですか。 生徒との馴れ合いも必要だと思います』


「…うぅ」




恥ずかしいのか持っていた書類をぎゅっと握りしめる名前先生。

この人は何だか小動物のような可愛さがある、かも。
もっと困らせたくなる。




「そうだ、これ届けなきゃいけなかったんですが…」


『誰に?』



「作法委員の生徒に。 でも誰が作法委員なのかわからなくて…喜八郎わかりますか?」




『……立花先輩に藤内、兵太夫、伝七ですよ』




「? 一人分余ります」


『さぁ? 何でですかね』





嘘をついた。


この後蛸壷を出て、もし僕が作法委員であることを知ったら、


貴方は僕に会いに来てくれるでしょう?




僕はこの人が好きになったみたい。

男なのに?
そんなの関係ないよ。




また会える喜びを実感しながら、僕は先生をよりぎゅっと抱きしめた。








101026

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あややの口調が曖昧ワロタ