ずっとずっと目で追い続けていた。



僕の教室から見えるくのたま教室の運動場。時間はちょうど羊の刻。
実技の授業なのかな?


いつもこの時間になると現れる“あの子”。



綺麗な黒髪を上に結んで靡く様はほんとに美しく、真剣な眼に僕は釘付けになるんだ。

あ、笑った。
今の顔すごく可愛い。



僕は授業そっちのけで窓の外を見ている。
ほんとはいけないことって、わかってはいるんだけど。


この前そのことで悩んでる僕に、三郎が「恋は盲目だからな」と言ってから、

どうやら僕は意識し始めてしまったみたいだ。



今ではもうこれが日課になっているんだけど。

僕は肝心な“あの子”の




名前を知らないんだ。








「知らないって…それでいいのかよ雷蔵。 私が調べてこようか?」


『いっいいよ! 自分で何とかするからさ』



確かに三郎の言うとおり調べてもらった方がいいかもしれない。

けど、三郎に“あの子”のことを教えたくなかった(恥ずかしいってのもあったんだけどね)。



だからかな?


全く“あの子”との接点がなく今日を向かえた。










そう、僕は今“あの子”と同じ教室にいる。

図書室の一番隅の机で本を優雅に読んでる“あの子”。
今日は中在家先輩もいない。




そして教室には僕と“あの子”しかいない。




日に当たって漆黒の髪がよりいっそう煌めく。
ペラペラと規則正しくページをめくるしなやかな手。
半開きの唇。

どれも人形みたいだなぁ、なんて。



どうしよう。



いざ、“あの子”を目の前にしたら緊張してきちゃった。








「雷蔵くん、だよね?」




あれ?

僕話しかけられてる?




さっきまで机で本を読んでたと思ったら、目の前に“あの子”がいた。

ソプラノの声で、さっきまで読んでた本を両手で抱えながら、僕に話しかけている。



というか、





『あれ、名前…』





知っててくれたんだ。







「うん。 知ってたよ雷蔵くん」


『はじめまして、君の名前は?』







「私の名前は名字名前。














(っ?!////)
(授業中私のこと見てたでしょ?)
(え、あ…)
(実はずっと気になってたの)





101101

……………………
お題お借りしました
まさかの逆告白パターン