満月と新月
みんなでご飯
一行はとりあえず、トリム港の宿へと向かい、食事を取ることにした。
相変わらず、ここは賑わっている。
食事をしながら、ユーリ達は話をしていた。
フェローのこと、ギルドの事を説明する。
そして、レイヴンが事のあらましをかいつまんで話してくれた。
「ってわけで、ドンにエステルを見ておけって言われたんさ」
「ベティちゃんが居るのに、っていったらさあ、あいつにはあいつのやることがあるから邪魔すんなとか言われたわよ」
レイヴンふうっと息をはいた。
「ま、天を射る矢のレイヴンだからこそ、意味のある事だとおもうけどぉん?」
「そしたら、いつの間にかギルドに入ってんだから、おっさん驚き」
「個々の意思を尊重してくれるらしいから、じーちゃんへの誓いは変わらないわん」
ベティはにっこり笑った。
「ベティの、ドンへの誓いってなんなの?」
カロルが聞いた。
「剣となり、盾となり、目となり耳となり、腕となり足となる。んで、勝手に死なない、だけど?」
ベティはカロルを見た。
「じいさんは勝手に死なないだけ守ってくれたらいいって言ってたけどね」
レイヴンはサバみそを平らげていく。
「勝手に死なないって何よそれ、変なの」
リタが言った。
彼女はハンバーグを食べている。
「でも、そんなにもドンを慕っているのに、なぜ天を射る矢には入らなかったんです?」
エステルが首をかしげた。
「まぁ、ボスを慕ってギルドにはいる人もいるけどね」
カロルが言った。
「そうねん…あたしダングレストの街を守りたいとは思わなかったからぁ」
ベティはデザートにユーリが食べているパフェをつつく。
「おまっ食うな!俺のが無くなる!」
「いいじゃん!ちょっとくらい!」
「意外と薄情ね」
リタは食後のお茶を飲んだ。
「そう?なんでも守ろうとするより、かっこいいと思うけれど」
ジュディスがにっこり笑った。
「というか、そのあんたら凛々の明星はフェローってのを追ってコゴール砂漠にいくのよね?」
リタは眉を寄せる。
「はい」
エステルがこくりと頷いた。
「砂漠がどんなとこかわかってる?」
リタは真剣に言う。
「はい、でも私知りたいんです。フェローの言葉の真意を…」
「ま、おっさんとしては、デズエール大陸ってのは好都合」
「どうしてかしら?」
ジュディスがレイヴンを見た。
「ドンのお使いでノードポリカへ行かなきゃなんないのよ。ベリウスに手紙を持ってけって」
レイヴンが懐にしまっていた手紙を出した。
「うわっ大物だね」
カロルが口を開ける。
「レイヴンってば、ベリウスに会ったことあるのん?」
ベティは首を傾げる。
「ないわよ?」
レイヴンも同じように首を傾げる。
「ふーん。期待されてんのねぇレイヴン」
ベティはにやりと笑った。
「その手紙の内容知っているのかしら?」
ジュディスが言った。
「ダングレストを襲った魔物の事だな。フェローってやつ?ベリウスなら、あの魔物の事知ってるってわけだ」
レイヴンは手紙をしまった。
「こりゃ、俺たちもベリウスってのに会う価値が出てきたな」
ユーリが言った。
「ですね」
エステルも頷く。
「っつーわけでよろしく」
レイヴンはヘラヘラと笑った。
「話は終わり?じゃああたしそろそろ休むわ」
リタはそういうと、部屋へと戻って行った。
「リタは……どうするんでしょう?」
「さぁ、な」
ユーリも立ち上がった。
「明日の朝まで自由行動でいいかしら?」
ジュディスが笑った。
「そうだね。明日になったら港へ行こう」
カロルが言ったので、みなそれぞれ出て行った。