アイスクリームが溶けるまで
「あ゛――――――、あちい」
部屋に温度計は無いが額から止めどなく流れ出る汗が気温の高さを何よりも物語っていた。側にある洗濯したてのタオルで汗を拭うが、すぐに汗は滝の様に溢れ出る。ニュースで猛暑日が続くとは言え、今年の暑さは異常だと思いながら目の前に首を振り続ける扇風機を強に変更した。猫たちも流石にアスファルトの地面にいるのは辛いと判断したのか、部屋の日陰に家族四匹で丸まっている。暑いのなら何も四匹で固まらなくてもと思いながらも、ぴったりと身を寄せ合いくっつく四匹を不思議にじいと見つめていた。
「ただいまです、蘭丸さん」
「ん、おかえり」
ガチャリと遠慮なしに開かれた扉から現れたのは蘭丸の同棲中の恋人である春歌だった。普段からワンピースを愛用し露出に少ない服を好む彼女だが、連日の猛暑が余程身に堪えたのかここ最近はTシャツにショートパンツと露出の多い服を好んで着用している。首筋に伝い落ちる汗を見て蘭丸はどきりとしてしまったが、昼間から暑さで頭がやられそうになっているのか、と熱を払う様に頭をぷるぷると振ると、突然の蘭丸の行動が分からない春歌は可愛らしく首を傾げるだけだ。
「買い物は無事に終わったのか?」
「はい。あとですね……イイ物を買ってきました」
「イイ物?」
数十分前にコンビニに買い物に出かけると言った春歌の手には少し大きめなコンビニの袋を持っているのが映る。目当ての物は聞いていなかったが、「イイ物」と言う言葉に反応してしまう。だが春歌は蘭丸の前に来ることなく、冷蔵庫の前にしゃがみ込み扉を開けた。
「アイスです」
「アイス……か、いいな」
「はい。色々買ってきましたので食べて下さいね」
そう言いながら袋の中からアイスを取り出し、ひょいひょいと何個購入したのか分からないアイスを入れていく。
「せっかくだから一個食うかな」
「あ、はい。何にしますか?」
春歌が購入してきたアイスの種類を伝えると、蘭丸は少し首を捻り考える。そしてパッと思いついたアイスを春歌に伝えた。