初めての××× | ナノ


初めての×××




事の始まりは簡単な事だった。既に四人組での活動がお馴染みとなった嶺二、蘭丸、藍、カミュは楽屋で本番までの休息を取っていたのだが、ひょんな事から蘭丸とカミュが言い争い始めたのだ。嶺二は宥めようとしたのだが話を全く聞かない二人に説得を早々に諦め、藍に至っては始めから二人をいないものとしてみなしているのか、パソコンの操作を行っている。犬同士の喧嘩の様にきゃんきゃんと騒ぎ立てる二人だったが蘭丸の一言で空気が一変してしまう。

「おれの言ってる事理解出来てないんじゃねぇか! てめぇは家で耳かきでもしてろ!」
「みみ、かき……」

蘭丸のたった一言にカミュは反論を止め口を噤んでしまう。言葉の意味が理解できていないのか眉間に深い皺を刻み、蘭丸をじいと見つめてくる。蘭丸も反論してくるかと思っていたカミュの意外な反応に怒りよりも驚きの方が勝り眉間の皺が解されていく。

「なになに〜、ミューちゃん耳かき知らないの〜?」
「外国には耳かきがないからね。カミュが知らなくても当然だよ」
「へー、そうなんだ。すっごく気持ちいいのに」
「気持ち、いい?」

横から口を挟む嶺二と藍の発言にカミュはますます意味が分からなくなり三人が話す単語を復唱するばかりだ。藍がパソコンで耳かきの画像を見せても「これの何がいいのだ」と繰り返すばかりで説明しても埒があかない状況に、嶺二は大げさにため息をつき、ぽろりと一言呟いた。

「それならさ〜、後輩ちゃんにしてもらえればいいじゃん」























「……と言う事だ、春歌」
「はぁ……」

春歌はソファの上で身をやや縮こませながらカミュの説明を聞いていた。要約すれば「春歌に耳かきをしてほしい」と言う事なのだが、カミュの態度はお願いと程遠く腕組をし、踏ん反り返っている。カミュの態度は気にはならないのだが、唐突な願い出に困惑を隠せない。ソファ脇にいるアレキサンダーにそっと目配せをするがアレキサンダーは大きな欠伸をし丸まって眠りについてしまう。

「何だ、出来ないのか?」
「いっ、いいえ、そんな事はないのですが……それじゃあ、準備してきますね」
「頼むぞ」

春歌はゆっくりとソファから立ち上がり、耳かき棒を取りに行く。新しい物がなく自身の使用しているものしかないのだが、今から新しい物を買ってこようにも夜中ではカミュが出歩く事を許さないだろう。そこまで使いこんでいない耳かき棒は綺麗であり大丈夫だろうと一人で確認をし、ついでにティッシュを二枚程手にとってカミュの元へ戻り再びソファに腰掛けた。
竹で出来た小さく細長い棒にうさぎの尻尾に酷似したものが付いた耳かきはカミュにとっては珍しく、棒をまじまじと興味深げに見つめる。

「あの、じゃあ……寝て下さい」
「どこにだ」
「ここです」
「んなっ!」

春歌がぽんと場所を示す為に叩いた場所を見てカミュは思わず後ずさりをした。そこは春歌の膝だったからだ。既に入浴を済ませている春歌の服装はお気に入りのもこもこのボーダーパーカーにショートパンツ。ショートパンツから出るむっちりとした白い太股に自分の頭を乗せる――いわゆる膝枕をする事になるとはカミュは予想だにしていなかった。藍から見せられた写真は己の耳を掃除している写真だけであり、相手がいると膝枕をする事になるとは予想外で今度はカミュが困惑してしまう。

「ど、どうしてもそこで寝なければいけないのか?」
「えっと……そう、ですね。すごくやりにくいので……お嫌ですか?」
「嫌な訳なかろう! …………頼むぞ」

思わず大きな声を出したせいで、ソファ横で眠っていたアレキサンダーがびくっと身体を起こしカミュをじいと見つめる。大声を出すなんて自分らしくないと思いながらも腹をくくり、ソファの上に横になり春歌の太股に自分の頭を乗せた。幾度となく触れた事のある柔らかい太股だがセックスの時や前戯以外で触れる事は初めてであり、妙な気恥ずかしさがカミュを襲う。春歌の柔らかい太股を堪能するのも悪くないが、早く終わってくれとすら考えてしまい程だった。

「それじゃあ、行きますね」
「あ、あぁ……」

春歌がカミュの耳朶にそっと触れる。カミュの好きな柔らかな指と温もりと触れられたくすぐったさで思わず身じろぎをしてしまうが耳かき棒がカミュの耳孔に入った時、カミュは氷の様に身を固まらせてしまった。

「ん……」
「あっ、ごめんなさい。痛かったですか?」
「いや、痛く、はない」

中をかりかりと擦りいわゆる掃除をしている春歌の手付きは優しいものであり痛みなど感じなかった。だがその代わりにカミュに何とも言えない気持ち良さが襲ってきたのだ。普段触られる事のない場所を引っ掻かれ背筋がぞくりとする。春歌が熱を持った手で自分の肌をなぞる様に触れる、セックスしている時の快楽に近い。耳かきでここまで感じると思ってはおらず、カミュは必死に声を押し殺して快楽に耐える。棒が奥まで進んだ時には少し籠った息を漏らしてしまったが、春歌は気付いていないのか気にせず耳かきを続ける。

「ふふ、先輩の耳の中綺麗で全然掃除しなくても平気ですね」
「そ、そうか……」
「はい、終わりましたよ」

最後にふっと耳に息を吹きかけられカミュは限界に達した。カミュの気持ちなど知る由もない春歌は屈託のない笑みで「次は反対側です」とカミュに反転するよう促す。カミュはむくりと起き上がるが春歌の命に従い反転する事無く、春歌の顔をじいと見つめたかと思えば春歌の両手首をぐっと掴んだ。

「え、せんぱ……きゃぁっ!」

自分の体重を掛け春歌をソファへと押し倒す。耳かき棒は音も立てず床に転がりアレキサンダーの近くで止まるが、気付きもしないアレキサンダーはすやすやと眠り続ける。カミュの突然の行動が分からない春歌は何度も疑問の声を上げるだけだ。

「あ、あの……どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもない……っ」
「先輩……息が荒い、です」

春歌から見たカミュは白い肌が朱に染まり、息も絶え絶えだ。はぁはぁと整わない息を落ちつける様子など微塵もなくカミュは春歌を情欲を持った瞳で見つめる。次第にカミュが春歌の上にゆっくりと覆いかぶさるとカミュの下半身から覚えのある硬度を感じ、小さな悲鳴をあげて今のカミュの状況を理解した。

「え? え? な、なんでそうなってるんですか?」
「っ、おまえの、せいだ」
「だ、だって、わたしは耳かきをしただけで……」
「責任……取ってもらうかな」

カミュの言葉を皮切りに春歌は疑問の答えを聞く間もなく、カミュによって快楽の底へと突き落とされていったのだった。
















後日、偶然会った嶺二に耳かきの感想を聞かれ「実に気持ち良かった」と酷く上機嫌で答えを返しているカミュの姿が目撃されていた。











ツイッターで「外人は耳かきした事ないから、耳かきだけでかなりの快楽を得られる」と言うのが回ってきた+フォロワーさんでみたいとおっしゃる方がいたので書きました。
何か春カミュっぽくなったよ。もっとカミュがびくんびくんしてるの書こうと思ったけど無理だった。以上



back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -