ラヴコレサンプル1 | ナノ



サンプル(冒頭)

歌謡祭から数ヶ月経ったある日、カミュは事務所の社長であるシャイニング早乙女から呼び出しを受けていた。呼び出しを受ける様な行いを普段しているかいないかと問われればたった一つだけ思いつく事があり、社長室へ続く廊下を歩きながら、その不安が的中しないで欲しいと言う事を内心願っていた。
 社長室の前へ着き、軽くノックを二回すると、中から「入ってマース」と同僚の寿嶺二であれば突っ込みが飛ぶであろう返事には一切突っ込みをせずに部屋へと足を踏み入れた。
 奇抜な格好などで迎え入れるのではと思っていたが、そのような事はなく大人しく椅子に腰かけ、神妙な面持ちでカミュを見つめている。サングラスの奥にある瞳は見えないが、恐らく鋭い視線であるのは気配から察する事は出来た。
「よく来ましたね、Mr.カミュ」
「呼ばれましたので。何か御用ですか?」
 瞳を逸らしたら負けだと思い、カミュも早乙女を見つめる。鋭い視線を送れば不審に思うだろうと、視線はあくまで柔らかく殺気を感じられないように、だが何が起きてもすぐ動けるようにはしていた。
「渡したいものがある」
「渡したいもの……ですか?」
 普段のふざけたような口調とは異なり、地を這うような声にやはりただ事ではないと感じ、思わず地に足を込めてしまった。
 だが次の瞬間、椅子から立ち上がった早乙女は天井近くまで高くジャンプをし、カミュの目の前に下り立った。それこそ読んで字のごとく目と鼻の先に自身の顔をカミュに近づけ、あまりの急過ぎる出来事に動けるよう気を付けていたはずのカミュだったが、全く動けず金縛りにあったかのように地に足を付けたままになってしまっていた。
「これデース。シルクパレスからお手紙デース」
「シルクパレスから?」
「YES。事務所に届きまシタ」
 目の前に差し出された白の封筒に書かれた美しい文字はシルクパレスの文字である事は間違いなく、美しい文字は幼少の頃より何度も見ていた女王が書いたものである事は、すぐに分かった。


back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -