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ロリコン、とはロリータコンプレックスという言葉の略称である。ロリータコンプレックスとは、幼女や少女への性的嗜好または恋愛感情のことだと定義されているらしい。近年では、成人男性が未成年を性の対象とする傾向の総称として呼ばれていることもあるが、いずれにせよ誉められた言葉としては扱われていないようだ。

柳蓮二という人間にしてはやたら不明瞭な物言いであるが、己がしかと理解していない事柄について断言するのは信念に反した。聞きかじっただけのロリコンという言葉に、本来なら気にすることもない俗さを感じたが、自分と全くの無関係なことだとも言い切れなかった。データマンと呼ばれる性分がまた新たな知識を求めてパソコンに向かい、検索枠にその言葉を打ち込む。恐らく、普段己が読むような書籍には書かれていないことだろうから。

調べて分かったことは、その通俗的な言葉は奇妙なバイタリティを持っているということだった。ある場面ではフェティズムを括る為の言葉に使われ、またある場面では誰かを批難し罵る為に使われる。

しかし己の性癖について悩んでいる者であれば、軽々しくロリコンなどという言葉を使うものではない。ロリコンというのは社会的に敬遠される性的嗜好であり、当人はそれをよくよく自覚しなければならないからだ。

「れんくん、まだ、おきてるの?」

パソコンの画面に向かう柳の膝に乗せられた幼い女児、なまえが眠そうに目を擦った。昼間にあれだけ遊び騒ぎ走り回れば、それはそれは疲れていることだろう。いたわるように頭を撫でてやると愛らしく足をぶらぶらとさせ限界を訴えた。

「いっしょにねようよ、れんくん」

甘えているのか、ただ眠いだけなのか、どちらともとれる響きだった。最も俺を幸福な気持ちにさせるにはどちらにせよ十分なものだったが。

「なまえ、俺はまだやることがある。先に寝てくれないか?」

その眼差しはどこか暖かく父性を感じさせるようで、達人と呼ばれる彼の意外な一面だった。しかし相変わらず眠そうななまえは、彼の服をその小さな手で握りしめ首を横に振る。いやだ、というサインだ。真っすぐに甘えてくる彼女をこの上ない程愛おしく思い、そっと抱きしめた。柔らかく暖かな身体からは仄かに石鹸の香りがした。

片手でマウスを操作し、見ていたページをお気に入りに追加して電源を落とす。俺には、関係ないものだった。俺はただなまえだけを見ていればいい。なまえの傍らで、彼女の世界の一部になれればそれで満足だ。――今は、まだ。

なるべく衝撃を与えないようになまえを抱き上げる。彼女は起きているのか眠ってしまったのか、目を閉じたままいっぱいに腕を広げ俺の腰元に抱き着いていた。 予め敷かれていた布団に運び、彼女を寝かせたその隣りに横になった。

――やはりもう眠ってしまっていたか。なまえは小さな寝息を立てていた。その柔らかな頬にそっと触れると、瞼がぴくりと動く。起こしたかと手を引いたがそうではないらしい。

再び頬に指を這わせる。徐々に、瞼、額と移動させ髪の毛を弄ぶ。くるくると指に巻き付けても、型のつかないしなやかな髪。肩につくかつかないかまで伸びた焦げ茶色のそれは、今己の髪の毛と同じ香りを漂わせていた。れんくんとおなじがいい、そうなまえが駄々をこねたからだ。髪が傷まないか心配だったが、なまえの機嫌を損ねないようにするのが俺の最優先事項になっていたため、仕方がなく折れたという経緯がある。やはり髪が傷まないか不安が残るため次はやらないと考えているが、おそろいだと心底嬉しそうに笑うなまえに勝てる自信は無い。

「おやすみ、なまえ」

あどけない寝顔をしたなまえの小さな額に、僅かに触れるだけの口づけを落とす。明日の朝目覚めたらなまえと何をして遊ぼうか。寄り添って目を閉じると太陽のように明るいなまえの笑顔が浮かんでは消え、これではなかなか眠れそうにないなと笑った。

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