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卒業式。別れを悲しみ、それぞれの旅立ちを祝う神聖な儀式。時間をかけて執り行われるその式は在校生にとっては長く、卒業生にとっては意外にも呆気ないものだ。彼女も、なまえも、在校生として迎えているこの式を、つまらないものだと感じているだろうか。それとも僕がこの式を中学校生活最後の思い出として迎えているように、貴重な時間だと捉えてくれているだろうか。
結局僕は部活を引退した後も、マネージャーとしての後継者である彼女に仕事を教えるという口実でよく部活に顔を出した。腕が鈍っては困ると、時にはレギュラーを担っていた赤澤や柳沢達を半ば強引に後輩指導に連れ出したりもした。全ては、なまえに会うためだ。テニスに必要のないシナリオも立てたりした。テニスに必要のないデータを集めたりもした。なまえに恋をしたからだった。誰にも言わなかった。先輩と後輩であることを選んで想いを告げることも無かった。
彼女と、同学年の男子が付き合い出したと聞いた時はなんともいえない虚無感に襲われた。だがそれもすぐに無くなった。僕は彼女と、先輩と後輩であることを選んだのだ。しかし時に、今も、彼女の震えながらの告白を抱きしめて受け止めていたら、結末は変わっていたのだろうかと思うこともある。卒業生代表、観月はじめ。
なんて苦し紛れの冗談を、君は笑ってくれるだろうか。


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