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「ねぇその女どこの誰?」

見慣れた明るいオレンジの髪を揺らしながら、右手に抱いた尻の軽そうな女と私を交互に比べながら最低な尻軽男千石清純は青い顔をした。あの、その、これは、なんて言葉にならない音を吐いて素晴らしく狼狽えている。なにも今日に限ったことではない。私が指摘しないだけで日常的に起こっていることだ。

女は巻き込まれたくないと思ったのかサッサと千石清純の手を払って人混みに消えていった。追い掛けるつもりはない。問い詰めるべきは彼女ではなくこの男だからだ。ひかりちゃん、と唇が動いたのを私は見逃さなかった。

「ひかりちゃん、青学の制服だったね。可愛い子だね」

にっこりと笑う私に千石清純は青い顔を更に青くして近寄ってきた。違う、とか、誤解だよ、とか相変わらず千石清純は下手くそに取り合った。言い訳は女を口説くより難しいらしい。

「ルドルフの美月ちゃん、氷帝の景子ちゃん、不動峰のアキちゃん、山吹の私。より取り見取りだねぇ」

全部知ってるんだよ、馬鹿清純。一人、また一人、あなたが女の子を口説く度に私はあなたから貰ったぬいぐるみの腹を引き裂いたり耳をちぎったりしなければいけなかった。良かったねぇ、身代わりがいて。

「候補は一人減るけど、精々幸せになりなよ」

二人の首に光るお揃いのネックレス。ひきちぎって、捨てる。知ってたよ。あなたが私に本気だったこと。だって私も本気だったから。

あなたがこれをくれた頃は、私たちもっと笑えてたよねぇ。

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