111 | ナノ

※死ネタ?

彼女はいつも、しにたがっていた。楽しいこと、嬉しいこと、それがどんなに些細な事だったとしても、彼女はこうふくを感じた時にそれを口にした。ふと、今思い立ったかのように、何事も無いように、しにたい、と言う。しあわせに看取られてしにたいのだと。正直、言っていることはよくわからなかった。しあわせなら、それでいいじゃねェか。次も、その次も、しあわせのまま。ずっとしあわせでいたいなら、ただ、ふしあわせの数を数えなければ良いだけだ。しかし彼女は首を横に振る。わたしがしあわせな時は、いつもあなたが隣にいる。つまりね、あなたのそばでしにたいの。バカか、お前は。ぐしゃぐしゃと頭を撫でると、彼女がしあわせそうに目を細め、ぎくりとする。そんなおれを見て、ふふ、と微笑んだその唇が微かに動く。本当に、バカだ。お前がおれの隣でしあわせそうにしんだら、おれはどうすればいいんだ。お前はふしあわせに看取られてしにてェのか。自分でも何が言いたいのかよくわからなくなり、天井を仰ぐ。彼女がしあわせなままいってしまったら、それはそれでいいのか。けれど、その代償は大きいように思う。おれの名前を呼ぶ、笑いかけてくれる、たわいのない話をしてコーヒーを淹れてくれる、お前じゃなけりゃあ、一体誰が。おれの隣で、いきていて欲しい、そんなあたり前な願いは聞いちゃくれねェのかよ。彼女は、ひどく曖昧に笑った。ああ、この話の最後は、思い出したくもない。



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