SHORT | ナノ

押し倒したい、なんて女の子が考えるようなことじゃない。それはよく分かっているつもりだ。私だって押し倒すよりも、押し倒されたい。かも知れない。大体押し倒すって言葉自体がなんだかハレンチ。というか、その押し倒したい相手、というのも存在自体がハレンチな人だ。カリファ風に言うと存在がセクハラ。まあ、長官のことなんだけど。

「長官、コーヒーが入りました」
「おお、なまえ。サンキュー」
「ハレンチです」
「何が!?」

カップに口をつけたかと思うと長官は勢いよく茶色いそれを噴き出した。正直引き気味に、(それでもそれも日課と化しているので)いつものように手際よくコーヒーに濡れた長官のシャツを拭く。……何が、って言われても、ああ……ほら、これも。今だってあなたの普段は布に遮られて隠れる白い肌に、濡れて張り付いたシャツが透けて凄く、凄く……

「……なまえ、どうかしたのか?」

流石に毎日コーヒーをひっくり返し慣れていても熱いものは熱いのか、長官の目には微かに涙が浮かんでいた。ふと手を止めた私に、長官がその危険に満ち溢れた瞳で上目遣いに視線を送ってくる。そんな事するから、勤務中だというのに全く私の理性は弱い。

「うーん、長官。襲っても良いですか?」
「はぁ!?なまえ、何考えてッ……」
「ハレンチなんです。私が」
「お前がかよ!!」

勤務中だ、とかまだ昼だぞ、なんて言いながら長官が立ち上がった。ならば仕事終わりで夜なら良いとでも言うのか。そのままソファにジリジリと追い詰めてコーヒーに濡れた胸を軽く押してやると簡単に崩れ落ちていく。それでもあなたは抵抗の言葉を吐かない。嫌だと思ったら長官命令でもなんでもすれば良いのに、そうしないということは。それは、逆に考えて、してもいいってことですか?

「長官、食べちゃいたいくらい大好きです」
「それは俺のセリフっん、」

言葉を紡ぐことさえ許さずに小さく開いた唇に唇を重ねれば、そこから甘い吐息が漏れた。やっぱり、わたしの長官は、かわいい。



そっとシャツのボタンに手をかけると、長官は最後の抵抗にため息を落として、静かに瞼を閉じた。

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