SHORT | ナノ

冬島の海域に入ったらしく、薄着では風邪を引いてしまうような気候だった。大丈夫だろ、と高を括っていたおれは今まさにこの寒さに後悔していた。

(あんたたち、次風邪引いてももったいないから薬は無いわよ!)

と、最近訪れた経済難に鬼へと豹変したナミが脅しをかけていたのを思い出す。参ったなぁ、こんなに寒いと思ってなかったしなぁ……せめて誰か甲板に出てきてくれればコートの一枚でも取りに行くのに。なんてことをウダウダ考えていると、天に願いが届いたのかなまえがひょっこりと甲板に顔を出した。

「ウソップー!」
「おお、なまえ!良いところに!」

マフラーをしっかり巻いてファー付きのコートを纏い、防寒対策はバッチリのようだ。まあ言うまでもないが、彼女の手におれのコートはない。

「見張りお疲れ様、ココア淹れてきたよ!」

その変わりに両手に湯気の立つカップ。なまえがおれのために?やばい、嬉しすぎる。

「サンキュー」

ココアを片手に船縁に二人で並ぶ。そんなことをしなくてもすぐ冷えてしまうだろうに、なまえが懸命にカップに息を吹きかける。ちらっと聞いた話だが、猫舌らしい。

「寒くない?」
「ああ、平気だぜ!」
「本当?薄着じゃない?風邪引いちゃうよ」

なまえが心配そうに顔をのぞき込んでくるのに、大丈夫と笑って答える。長い航海の間で、潮風にはすっかり慣れてしまった。流石に冬島の気候には慣れないが普段の航海では特に気にならない。なまえは寒がりらしく、よく長袖のパーカーを着ているのを見かけた。寒がりのくせに猫舌なのか。……そんなところも可愛いな。

「ルフィだって同じようなもんだぞ?ゾロだってまだ半袖のままだし……フランキーなんかほぼ裸だ」
「私はウソップだから心配してるの、それにフランキーは改造人間だから寒さなんて平気だよ」

ルフィとゾロが心配じゃなくて、おれだから心配する?おれとあいつらの違い……強さ、とか?もしそうだとしたら、自分で言うのも悲しいが絶対に越えられない壁が立ちはだかることになる。いや、いくら強くても寒いもんは寒いだろ。

「……別に気にしないけどよ、あれか?おれが弱いから、とか。あいつらは強いから寒さなんて平気だろうけどっていう……」
「もう!違うよ。あのね、私はウソップが弱いからなんかじゃなくて、っていうかウソップは弱くないし、」

ムッとした顔のままなまえを見ると、なまえは呆れたような顔をしてみせた。寒さのせいか、頬が薄っすらと赤く染まっている。が、すぐに頬の赤みの原因は寒さのせいじゃないって分かった。

「ウソップが好きだから、心配してるんだよ」

そういうこと

「あ、うん、そっそうか」
「うん、そう」
「えっと、ごめん。おれも好きだ」

寒いはずなのに、体中熱くて。二人なら、なまえと居れば、全然寒くなかった。

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